写真は2020年5月29日に開かれた、台湾の独立を阻止するため2005年に採択された「反国家分裂法」の制定15周年を記念するイベント。中央が許其亮(シュー・チャーリャン)中央軍事委員会副主席(写真:ロイター/アフロ)

 米国の大統領がトランプ氏からバイデン氏に交代した後も、米国と中国の対決ムードが徐々に強まっているように見える。

 2021年3⽉5⽇から開催された中国の全国⼈⺠代表⼤会(全⼈代)は、⾹港の⾏政⻑官や⽴法会議員の選挙制度の⾒直しを決定した。香港の民主派は「非愛国者」とみなされて政治プロセスへの関与を阻まれそうだ。

 7日に記者会見した王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は、(南シナ海、台湾、新疆ウイグル自治区、香港、チベットの)問題は中国の内部事情であり、核心的利益が侵害されるのを断じて許さないと強調。米バイデン政権の動きをけん制した。

 これより前、バイデン政権は3月3日に、米国の国家安全保障戦略の策定に向けた暫定指針を発表。中国について、経済・外交・軍事・技術力を結集して国際システムに持続的に挑戦する能力がある「唯一の競争相手」であるとしていた。

 2月4日、バイデン大統領が国務省で外交方針に関して初めて演説したところでは、米国の事実上の仮想敵国として列挙されたのは中国とロシアの2カ国だった。

 大統領はこのとき、「米国と張り合おうとする中国の野心や、わが国の民主主義の混乱をもくろむロシアの意志など、広がりつつある権威主義に立ち向かわなければならない」と述べていた。「民主主義の米国vs権威主義の中国・ロシア」という構図である。

敵視する米国、不確実視する中国

 しかし、ロシアとの間では新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長が、バイデン政権発足後に実現している。しかもこの合意は、経済力がもともとさほど強くない上に、欧米による経済制裁などから、軍拡競争に乗り出す余裕がないロシア・プーチン政権が、対米関係改善の期待も込めつつ、むしろ望んでいたものだった。

 中国はロシアとは異なり、経済成長力は今のところ十分にあり、経済規模が米国のそれにいつ追いつくのかが話題になっている国である。全人代で公表された21年の予算案では、国防費が前年比プラス6.8%になり、経済成長率目標(6%超)並みの数字を確保した。

 これに対し、米国防総省のカービー報道官は、軍拡を続ける中国に対抗するために米軍の戦略や戦力を整えておく必要があると表明。しばしば指摘される中国の国防費の不透明さには直接の言及を避けた上で、「南シナ海での攻撃的活動や隣国への強圧的行為など、中国が説明すべきことはたくさんある」とした。

 また、民主化の関連で、ロシアでいま目立つのは反体制派指導者ナワリヌイ氏の問題くらいだが(米国はロシア政府高官らに3月2日に制裁措置)、中国にはいくつもある。

 以上のように考えてくると、「民主主義」代表の米国と正面から対決し得るのは中国であることが、改めて理解されるだろう。米中の対立に関連する動きはその後も出てきており、安全保障・軍事面に関するものもある。

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