米長期金利上昇をどう見るか(写真:ロイター/アフロ)
米長期金利上昇をどう見るか(写真:ロイター/アフロ)

 今年2月は、長期金利が内外市場でほぼ一本調子に上昇する月になった。月末近くになると、そうした金利の上昇がハイテクを中心とする株価の下落に結びついたため、注目度が高まった。

 米国の10年物国債利回りは、2月25日に一時1.61%まで上昇した。新型コロナウイルス感染拡大という新たなタイプの危機に直撃されて、昨年3月には一時0.31%までパニック的に低下する場面があったわけだが、そこを起点に考えると、0.25ポイントという一般的な政策金利の変更幅で数えると5回分以上という、大幅な上方シフトである。2月初めの水準を起点にすると、利上げ2回分以上の幅で利回りが上昇した。

 こうした長期金利の急上昇は、世界の金融市場の中心点である米国から、欧州、日本、オーストラリアなど、世界の各地に波及。ユーロ圏では独10年債利回りがマイナス0.20%まで一時上昇した。また、日本では10年債利回りが翌2月26日に一時0.175%まで上昇した。これは日銀がマイナス金利導入を突然決定した2016年1月29日以来の水準である。

中銀サイドは容認色を帯びたメッセージ

 中央銀行サイドは上記のような市場金利上昇に、どう対応したのだろうか。

 欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備理事会(FRB)からはまず、「実質ベースでは金利が低いから大丈夫だ」と言わんばかりの、容認色を帯びたメッセージが出てきた。そのことが市場の不安心理を強めて債券売りを加速させた面もあるのではと、筆者はみている。

 ECBが2月18日に公表した1月理事会のアカウンツ(議事要旨)は、米国から波及してきた名目ベースの金利上昇を注視することの重要性に、ECBのチーフエコノミストでもあるレーン専務理事が言及したことを明らかにする一方で、「金融環境を推し量る上で重要なのは実質ベースの金利であり、それは記録的な水準に低下した」と記述。長期金利の上昇に対するECBの懸念は強くないという印象を、内外に与えた。

 米国では、FRB指導部の一員に数えられるウィリアムズ・ニューヨーク地区連邦準備銀行総裁が翌19日、CNBCによるインタビューの中で、「インフレ期待が上昇している兆しが見られる。当局の長期的目標である2%と整合する水準に近づいている」「将来に実質利回りが幾分か高くなる兆しであり、景気への楽観が強まっていることを反映している」「従って私にとっては懸念要因ではない。

 むしろ、経済見通しは力強さを増しているという市場の見方を反映したものだ」と述べた。米通信社ブルームバーグはこのニュースに、「こうした利回りの動きに歯止めをかける措置を講じる方針が、米金融当局にはないことが示唆された」という説明を加えた。

続きを読む 2/4 「動向注視」「現時点では心配していない」

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