米国ではドライブスルー接種も(写真:ロイター/アフロ)

 厚生労働省と川崎市は1月27日、新型コロナウイルスに有効とされるワクチンを人々が集団接種することを想定した初めての訓練を、川崎市立看護短大で実施した。どのような様子だったかは訓練の模様を取材したマスコミ各社により報じられたわけだが、難しい課題がいくつも浮かび上がった。筆者なりに整理すると、以下の3つになる。

◆課題(1) ~ 接種対象者1人当たりにかかる時間が意外に長いこと
 インフルエンザの予防注射の場合、「受付→問診表記入・体温測定→簡単な問診・接種→会計」まで含めて30分もかからないというのが、筆者の例年の経験である。しかし、今回の訓練では、「受付→予診(問診)票記入・確認・待機→予診(問診)→接種待機→接種」、ここまでで13~26分かかったようである。その後、「接種済み証交付→副作用に備えた経過観察(15~30分の待機)」がある。1人についてトータルで30分~1時間程度という長めの時間がかかっており、その分、1日にワクチンを接種できる人数は限られてくる。

 これは特に持病のある高齢の接種対象者に当てはまりやすいことだが、接種による副作用への懸念などから問診時に質問が出されて、時間が長くなりがちだと考えられる。この点について川崎市立看護短大の坂元昇学長は東京新聞の取材に対し、問診での質問に医師が1つひとつ答えると時間がかかるので、相談コーナーを別に設ける必要があると指摘した。だが、かえって現場に必要な医師の数が増えてしまう可能性もあるように思われる。

やってみなければ分からない……

 ワクチン接種を担当している河野太郎行政改革担当相は1月28日の参院予算委員会で、ワクチン接種に必要な「接種券」を住民に発送する際に予診票を同封する案を検討していると述べた。それにより数分間のプロセス短縮を図る。だが、事前に記入してきてくれる人がどこまでいるのかは、やってみなければ分からない。

◆課題(2) ~ 必要な医療従事者(医師・看護師)の人員確保
 これがおそらく一番の難題である。医療の現場がひっ迫していることが緊急事態宣言の再発令に至った理由の1つであるわけだが、ワクチン接種の際には当然、医師・看護師といった有資格者が必要になる。

 滋賀県の担当者は朝日新聞に対し、「(医療従事者は)コロナ対応はもちろん、それ以外の病気の治療もある。ワクチン接種のために抜けたとき、病院をどう回すか。十分に詰めないといけない」とコメントした。また、千葉市の担当者によると、接種会場の規模は「医師の確保状況による。場所を決めても医師が集まらないと進まない」ので、1日の接種可能人数も医師の数によって変わるという(1月28日付 毎日新聞)。

 川崎市の医師会長は読売新聞に対し、「開業医や勤務医が通常診療の合間を縫って駆け付けるなど、総動員して対応するしかない」と話した。まさに「綱渡り」の接種態勢になってしまう。

◆課題(3) ~ 地方自治体にはノウハウがない上に、国からの情報が不足・混乱
 1994年に予防接種法が改正されて以来、集団接種が全国一律で行われたことはなく、ノウハウをもはや有していない市区町村が多い。そうした中で、「準備を急ぐ自治体の不安の要因となっているのが、国からの情報不足や説明の変更」なのだという。群馬県やさいたま市では、国からの説明の変更を受けて、接種に向けた準備作業が混乱した。

 このほか、ワクチン接種の管理では、厚生労働省が構築を進めているワクチン流通を管理するためのシステムと、河野太郎行政改革相が主導してワクチン接種者を把握するために導入するシステムと、2つのシステムを同時に用いていくことになっており、現場の実務が増えることなどへの懸念の声が自治体の側で出ているという(1月28日付読売新聞)。

続きを読む 2/3 一元化したシステムが必要

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