2021年1月14日に中国・石家荘市が封鎖された(写真:ロイター/アフロ)

 日本経済新聞は2020年12月19日、中国の習近平指導部は2021年の同国の実質国内総生産(GDP)成長率目標を「8%前後」とする方向で調整に入ったと報じた。情報源は複数の政府関係者だという。新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた国内経済がほぼ正常化したことを受けて、2%程度にとどまる見込みの2020年からのV字回復を描く。21年は例年通り3月に開幕する全人代(全国人民代表大会)の場で、政府活動報告の中で正式に公表される段取りである。

 強権的な手法によりこのウイルス封じ込めに成功した中国で、実質GDPの前年同期比がマイナスになったのは、マイナス6.8%と大きく落ち込んだ20年1~3月期のみである。その後は、同4~6月期が前年同期比プラス3.2%、同7~9月期がプラス4.9%になった(図1)。なお、年初来の成長率は同7~9月期時点でプラス0.7%になっており、マイナス圏を脱した。

■図1:中国の実質国内総生産(GDP)成長率
(出所)中国国家統計局

 もっとも、中国経済の先行きについては過度の楽観は禁物だと、筆者はみている。

 実体経済がある程度まで回復したことをにらみ、新型コロナウイルスへの対応優先でいったん棚上げしていた経済の構造改革を、中国当局は徐々に再開していくつもりのようである。中国の金融機関が抱える不良債権の処理、企業や家計が過大な債務を抱えている問題への対処など、短期的には景気を下押しする方向の改革が進められていくだろう。

 また、独占禁止法などを通じて巨大IT(情報技術)企業への管理を当局が強化しようとする動きも気になる。トップダウンで管理色が強い、中国らしい経済政策運営の延長線上の話だと言えばそれまでだが、民間のイノベーションや活力を圧迫する側面があることは否めない。

 それら2点以上に注視すべきだと筆者がみているのは、感染力がかなり強い変異種(「変異株」と表記するメディアもある)がいくつも登場している新型コロナウイルスの中国国内における今後の感染状況と、中国当局の対応策である。

変異種が続々と発生

 このウイルスに関しては、中国・武漢発で流行したものよりも、世界でその後感染が拡大していったものの方が、変異を経て感染力が強くなっていたとの研究結果がある。そして、英国や南アフリカで感染力のさらに強い変異種が発生しており、世界に広がりつつある。

 日本の厚生労働省は20年12月28日、南アフリカから成田空港に同月19日に到着した30代の女性が変異種に感染していたと発表した。日本で初の事例である。

 インド政府は12月29日に、英国からの帰国者6人から変異種が検出されたと発表した。台湾の陳衛生福利部長(衛生相)は同月30日に、英国からの帰国者から変異種が確認されたと発表した。

 AFP通信などは12月31日、新型コロナウイルスの変異種が中国で初めて確認されたと、中国当局の資料をもとに報じた。英国から同月14日に帰国した上海の女子学生で、到着時に軽い症状があり入院。24日に遺伝子検査をしたところ変異種が検出されたという。

 米国では、まずコロラド州で12月29日、20代男性の変異種への感染が確認された。最近の旅行歴はないという。次にカリフォルニア州のニューサム知事が同月30日、同州南部で変異種が確認されたと発表した。海外渡航歴のない男性である。

 米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「カリフォルニアでより多くの事例が出てきても驚きではない。他の州からも報告されることになるだろう」と発言。年明け1月4日にはニューヨーク州のクオモ知事が、最近の渡航歴がない60代の男性から変異種が確認されたと発表した。フロリダ州でも確認されており、米国では変異種の市中感染がすでに広い範囲で進んでいる可能性がある。

続きを読む 2/2 中国で相次ぐ気になる動き

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