【4月】
ニール・カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁
「治療薬あるいはワクチンが入手できるようになるまで、(新型コロナウイルス)感染の再燃と対策強化を繰り返すことになるかもしれない」
(4月12日、米CBSの番組で)

~ 新型コロナウイルスに効く治療薬が向こう数カ月で市場に出回るようにならない限り、米経済が早期に回復するとの予想は過度に楽観的だと、カシュカリ総裁は指摘。「世界の状況を観察している。経済活動のコントロールを緩めるのに伴い、ウイルス感染は急に再拡大する」とも述べつつ、米国の経済には今後18カ月にわたり「波」が繰り返し押し寄せる可能性があると指摘した。

 その後、4月20日にはアンソニー・ファウチ米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長が、「ウイルスを制御可能な状況にしない限り、本当の意味での経済的回復は実現しない」「早計な行動で感染が急増する事態を招けば、状況は後退する」と述べて、トランプ大統領が当時模索していた感染拡大阻止策解除に強く反対した。

【5月】
安倍晋三首相(当時)
「このウイルスの特徴を踏まえ、正しく恐れながら、日常の生活を取り戻していく。専門家の皆さんが策定した新しい生活様式は、その指針となるものです」
(5月4日、緊急事態宣言延長決定の際の記者会見)

~ 新型コロナウイルスとの闘いが長期戦になっていく中で、政府は「新しい生活様式」というコンセプトを打ち出した。「もう一度申し上げますと、外出それ自体は全く悪いわけではないということであります」「3つの密を避けることを大前提に、新たな日常を国民の皆さんと共につくり上げていく。5月はその出口に向かって真っすぐに進んでいく1カ月です」「同時に、次なる流行のおそれにもしっかり備えていきます。その守りを固めるための1カ月でもあります」といった発言も、首相からはあった。

【6月】
麻生太郎財務相
「(消費税について)いま引き下げることは考えていない」
(6月2日、参院財政金融委員会)

~ 野党だけでなく自民党内にもある消費税率引き下げ(消費減税)による景気刺激の主張に対して麻生財務相は、政治家らしく「いま」と限定しつつも、考えていないと発言。「公正公平という意味において、分かちあうという観点から、社会保障の財源として消費税を位置付けている」「全体でこの社会保障を支えていくという制度へ大きく転換していくためには、どうしても消費税は必要なものだと思っている」と説明した。毎日新聞が12月12日に「しぼむ消費減税論 菅首相、一貫して否定 自民推進派『主張できる状況にない』」と題して報じたところによると、菅義偉首相や加藤勝信官房長官のスタンスゆえに、自民党内の消費減税論は足元でしぼんでいるという。

国際協調による物価水準引き下げを明確に否定

【7月】
黒田日銀総裁
「私は全くそういうふうに考えていません。目標も適切ですし、手段も適切であると思っていますが、様々な事情、状況によってこういう事態が続いています。ちなみに、多くの先進国でも2%の目標を維持していますが、達成されていない状況が長らく続いているということは事実です」「(海外の中央銀行とともに見直すということを検討する可能性は)全くありません」
(7月15日、金融政策決定会合終了後の記者会見)

~ 「物価安定の目標」である2%の達成を日銀は目指してきたものの、10年たっても達成できないのは目標が間違っていたからだとの仮説が成り立つとして、もっと現実的な目標に見直す考えはあるか、国際協調で2%の物価目標を引き下げようという考えはあるかとの質問が、記者会見で投げかけられた。

 これに対し黒田総裁は、上記のように冷淡に返答した。達成できない目標を掲げたまま、それを目指して金融緩和を続けるのならば、その金融緩和は事実上「エンドレス」である。日銀だけでなくFRBや欧州中央銀行(ECB)も、経済の構造変化を受けてすでに時代遅れになってしまった感が強い2%のインフレ目標や2%弱の物価安定の定義に、こだわり続けている。

 その根底には、目標の変更で中央銀行の信認が失われてしまうことへの警戒感に加えて、目標水準を引き下げた国の通貨は減価しにくい通貨だとみなされて買い進められるリスクがあるとの考えがあるようだ(黒田総裁は財務官経験者でもあることから、円高への警戒心がかなり強いように見受けられる)。

 そうした為替面での不利な状況を招くことなく目標を引き下げるには、国際協調による目標水準の一斉引き下げが一つのアイデアになるわけだが、黒田総裁はこのアイデアを明確に否定した。

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