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2020年を1字で表す漢字は「密」だった(写真:共同通信)

 もうすぐ終わる2020年(令和2年)。新型コロナウイルスの感染が拡大して世界経済が大きく落ち込んだり、生活スタイルが大きく変容したりするなど、これまでに例のない、異様とも言える年になった感が強い。ここではこの1年を、ヒット商品や流行語のランキングなどをもと基に振り返ってみたい。

 私事になるが、今年の年始早々、筆者はインフルエンザにかかった。予防注射は10年以上にわたり毎年欠かさず秋に受けてきたのだが、流行するウイルスのタイプが違ったり、注射をしてから時間がたって抗体が弱くなっていたりすれば、結局かかってしまうらしい。お正月に実家でゆったりすごせなかったので、相当げんなりした。だがこの時点では、まさか世の中全体が別のウイルスによって大変なことになるとは、想像もできなかった。

 「これはまずいな」と筆者が強く思い始めたのが、2月初めにソウルに私用で渡航した際の経験である。「新型肺炎」とその頃呼ばれていた問題は中国に限られた話だという意識がこの時点ではまだ強く、東京の街中でマスクをしている人はせいぜい3割ぐらいだったと記憶している。だが、「水際」の羽田空港国際線ターミナルの職員はマスク装着率100%。そして、見に行ったソウルの音楽ライブ会場では全員が完全にマスクをしていた。苦しくなってマスクを下ろして口を出すと、監視員がすかさず強い口調で注意してきた。その後、日本を含む世界中へと新型コロナウイルスが拡散していった経緯は、ご存じの通りである。

 それから4カ月ほどたった6月10日の日経MJ(流通新聞)に、2020年上半期の「ヒット商品番付」が掲載された。東西の横綱は「オンライン生活ツール」と「任天堂『あつまれ どうぶつの森』」。大関は「応援消費」と「おうちごはん」。関脇は「無観客ライブ」と「テークアウト」。これらはすべて、ウイルス感染拡大をうけた「新しい生活様式」の関連である。平幕の顔ぶれを見ても、西前頭5枚目に「手作りマスク」、同12枚目には「アマビエ」が入っていた。

ウイルス退散の期待もむなしく……

 上記は、緊急事態宣言が4月7日に発令されて5月25日に全面解除された後の番付なので、新型コロナウイルスが人々の生活にもたらした苦難が反映されているのだが、それでもこの時点ではまだ、「夏になって暑くなればウイルスは退散してくれるのではないか」といった、漠然とした期待感があったように思う。

 「もう少しだから頑張ろう」と自分に言い聞かせるようなセリフが、あちこちで言われた時期でもあった。他人とのコミュニケーションができるほのぼのした面もあるゲーム、通称「あつ森」が西横綱になったことには、人々の心にそうは言ってもこの時点ではまだそれなりに余裕めいた部分があったからなのかもしれない。

 だが、夏になっても新型コロナウイルスとの「共存」状態が続き、マスクに汗が染みる中で、このウイルスとの闘いは長期戦だということが誰の目にも明らかになっていった。東京五輪・パラリンピックの開催が1年延期されたが、結局は中止されるだろうというのが、世の中で多数意見になっていった。