
12月8日に発表された7~9月期のGDP(国内総生産)2次速報で、実質GDPは前期比+5.3%・同年率+22.9%に上方修正され、緊急事態宣言が全面解除された後の国内景気が個人消費や輸出の主導で大きくリバウンドしたことを、あらためて確認する内容になった。だが、同日に発表された個人消費関連のいくつかの数字は逆に、回復基盤の脆弱さをあらためて確認させられるものだった。
厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計調査速報で、現金給与総額は前年同月比マイナス0.8%になった(減少は7カ月連続)。
内訳を見ると、所定内給与は同+0.3%(2カ月連続増)だが、新型コロナウイルス感染拡大への対応などから在宅勤務や自宅待機の人が増えている中、所定外給与は同マイナス11.7%という大幅な落ち込み(14カ月連続減)になった。
ボーナスなどが含まれる特別給与(特別に支払われた給与)は同マイナス7.2%(6カ月連続減)である。そして、現金給与総額に物価の騰落を加味した実質賃金は同マイナス0.2%(8カ月連続減)になった。消費税率引き上げから1年が経過し、10月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)前年同月比がテクニカルに下方シフトしてマイナス0.5%になったものの、実質賃金はマイナス圏を脱することができなかった。
一時は上昇した名目賃金も……
そうした現金給与総額および実質賃金の動きを、水準を把握しやすいため筆者が好んで用いている季節調整済指数(15年=100)で見ておくと、下記のようになる(図1)。
1人当たりの名目賃金である現金給与総額の指数は、「官製春闘」という毎年の支援材料もあり、一時は103台まで上昇した。ところが、新型コロナウイルス感染拡大の危機に見舞われると、今年5月には100を下回った。その後はやや浮揚しているものの、冬のボーナス減額の動き(業績面の打撃が大きい一部の業種ではドラスチックな減額の事例も報じられている)、さらにはベアのついた賃上げがかなり難しそうな来年の春闘といった厳しすぎる「逆風」が、家計を待ち受けている。
総務省からはこの日、10月の家計調査が発表された。実質消費支出は前年同月比+1.9%(13カ月ぶり増)で、季節調整済前月比は+2.1%(3カ月連続増)と、マスコミ記事のヘッドラインには良い数字が並んだ。だが、前年同月比のプラスへの転換には、消費税率引き上げから1年が経過したというテクニカルな要因が寄与している。
また、勤労者世帯の可処分所得のうち消費支出に回された割合を示す平均消費性向(季節調整済)は66.8%で、前月から低下した。3カ月移動平均で見ると上昇しているものの、以前に推移していた70~75%程度のレンジは遠い(図2)。
総務省からはこの日、10月の消費動向指数も同時に発表された。その中で筆者が特にウオッチしているのは、消費関連の各種統計の合成指数の一種、総消費動向指数(実質)である。今回は前年同月比マイナス1.9%、季節調整済前月比でプラス1.1%という結果になった。
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