マスクから解放されるのはいつか(写真:アフロ)
マスクから解放されるのはいつか(写真:アフロ)

 11月30日に経済産業省から発表された10月の鉱工業生産速報は5カ月連続の増加になり、生産活動の復調が続いていることが確認された。業種別で筆者が注目したのは、自動車工業の生産の季節調整済指数(2015年=100)が104.7に上昇し、今年1月の水準(104.3)を、早くも上回ったことである。在庫の補填、あるいは中国・米国向けの輸出増加に対応しての増産によって、日本の自動車の生産は「コロナ前」の水準へと、いち早く戻った。

 デジタル化の関連でも、生産面で明るい動きがある。そのあたりが明確に示されたのが、ハイテク産業が立地している台湾における経済成長見通しの上方修正という動きである。

 台湾の行政院(内閣)は11月27日、2020年のGDP(国内総生産)成長率見通しを、それまでの前年比+1.56%から同+2.54%へと大幅に上方修正した。主因は付加価値が高い半導体の堅調な輸出である。5Gに対応したスマートフォン向けや、テレワーク拡大で膨らむパソコン向けの需要が盛り上がっているという。

回復力の弱さ目立つサービス業

 このように製造業の生産活動復調が目立つ一方で、サービス関連では回復力の弱さが目立つ。同日に総務省から発表された9月のサービス産業動向調査では、月間売上高(サービス産業計)が前年同月比マイナス11.3%になった。2月から8カ月連続で減少しており、政府が緊急事態宣言を全面解除した後も、マイナス幅はなかなか縮小してこない(図1)。

■図1:サービス産業動向調査 月間売上高(サービス産業計)
■図1:サービス産業動向調査 月間売上高(サービス産業計)
(出所)総務省
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 では、サービス業のうちどのような分野で回復が特に鈍いのか。そのあたりを知るには、経済産業省の第3次産業活動指数が使いやすい。広義の対事業所サービスおよび対個人サービス(「非選択的」と「し好的」にさらに分類)について、9月までの動きを追うと、「広義し好的個人向けサービス」が、回復の状況で劣後していることがわかる(図2)。

■図2:第3次産業活動指数 広義対事業所サービス、広義対個人サービス
■図2:第3次産業活動指数 広義対事業所サービス、広義対個人サービス
(出所)経済産業省
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 新型コロナウイルス感染リスクを人々が強く意識している限り、対面型の営業が多いサービス産業では、売上高の回復にはどうしても限界があるだろう。このように「人」は感染源になり得る一方、消毒などの感染防止策さえしっかりできれば「モノ」は感染源にはならない。

 製造業で景況感の水準が相対的に高く、サービス業の水準が低いパターンは、新型コロナウイルス感染第2波に見舞われていくつもの国が2度目のロックダウン(都市封鎖)に追い込まれた欧州にもあてはまる。

 11月の改定値で、ユーロ圏の製造業PMI(購買担当者景気指数)は53.8になっており、好不況の分岐点である50を上回っている。これに対し、サービスPMIは41.7に急低下した。製造業よりもサービス業の方が経済に占める割合が大きいことを反映して、両者を総合した指数は50を大きく下回る45.3である。新型コロナウイルスの感染拡大をなんとかクリスマス前に沈静化させるべく、域内各国の当局が経済活動に「ブレーキ」をかけたことから、ユーロ圏の経済は10~12月期に再び前期比マイナス成長に陥った可能性が高い。

 日本の場合、新型コロナウイルス感染第3波に見舞われているものの、ユーロ圏ほどの厳しい事態には陥っておらず、10~12月期は前期比プラス成長を確保するというのが、市場のコンセンサスである。短期的な見通しは、ユーロ圏と比較する限りでは、まだ明るいと言えるだろう。

 しかし、中長期となると話は別である。人口減・少子高齢化がいち早く進んでいるため日本経済の長期見通しが厳しいという点は、筆者の持論であり、昔から言ってきたことである。ここでは、向こう数年といった中期的なスパンで日本のサービス業が直面しそうな厳しい状況を考えてみたい。

 そのように書くと、政府が展開してきた「Go To キャンペーン」によって飲食業や宿泊業は一息ついており、景気ウォッチャー調査を見てもこれらの業種では景況感が改善しているではないか、と反論する方もいらっしゃるだろう。

 だが、筆者に言わせると、こうした政策的な需要のかさ上げは、厳しい言い方をすると、「くせもの」である。そうした業種に属する会社にとり、今回のキャンペーンが最終的に良い結果につながるのかどうかは未知数である。

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