最後に、ワクチンが普及するまでの間に経済が落ち込むのを防ぐ、さらには先をにらんだ手を打っておくという名目で、また大規模な財政出動がありそうなので、足元の状況を整理しておきたい。菅首相が策定を指示した追加経済対策の主要な財源となる2020年度第3次補正予算案の規模は、筆者が当コラムでこの問題を取り上げた11月17日配信分(「個人預金はかなり増えたが……第3次補正予算案は大膨張?」ご参照)よりも後に出てきた情報から考えて、どうやら「20兆円超30兆円以内」が、政治的な落としどころになりそうである。

 産経新聞は11月24日に朝刊の1面トップで、「3次補正 20兆円超に拡大 ワクチン接種費用計上 政府・与党検討」などと報じた。20年度3次補正の規模について、「政府・与党が20兆円超とする方向で検討していることが23日、分かった」「新型コロナウイルスの感染拡大への対応やデジタル化の推進、温室効果ガス削減の研究開発を加速するための基金創設などが盛り込まれる」「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化などの費用も膨らみ、当初見込んだ10兆円超を大きく上回る見通しだ」という。

 3次補正の規模について筆者は、11月上旬の時点では「10~15兆円規模」ではないかとみていた。しかし、その後の与党幹部の発言内容から、予想の数字を上方修正せざるを得なくなっていった。21年度以降を対象とする新たな「国土強靭化計画」でも、与党側から拡大圧力が加わっている。自民党の世耕弘成参院幹事長からは、3次補正の規模について「30~40兆円」という発言も飛び出した。

 上記の産経新聞の記事の行間からは2つのことが読み取れると、筆者は考えた。

(1)3次補正の規模は「20兆円超30兆円以内」が落としどころとみられること

 産経新聞は上記のニュースを解説する記事の中で、2次補正までで20年度の新規国債発行額が過去最大の90.2兆円にのぼっていることを引き合いに出しつつ、3次補正の規模について「30兆円超は難しい」との首相周辺のコメントを掲載した。30兆円超と推計される7~9月期の需給ギャップを「全て公的需要で埋める必要はない」との経済官庁幹部コメントも紹介された。どうやら30兆円近辺が天井になりそうな雲行きである。

3次補正はまず「金額ありき」か

(2)3次補正に盛り込まれる主な項目に「Go Toキャンペーン」延長が見当たらないこと

 菅首相が11月10日に追加経済対策・3次補正の策定を指示した時点では、来年1月末をメドに終了する「Go To トラベル」延長も盛り込まれる見通しと報じられていた。しかしその後、新型コロナウイルスの「感染第3波」にどう対応するかが大きな焦点になり、20日には新型コロナウイルス感染症対策分科会が「Go Toキャンペーン」について、感染拡大地域を対象にした適用除外などの見直しをするよう、強く提言した。

 これを受けた政府の対応には、中途半端な感が漂う。「Go Toトラベル」では、感染拡大地域を目的地とする旅行を補助対象から除外する方針を赤羽一嘉国土交通相が24日に表明したが、感染拡大地域から出発する旅行は引き続き補助の対象にすることになった。感染拡大地域を「発着する」ケースを除外する方が分かりやすいように思うのだが、それでは経済活動への影響度合いが大きすぎると、経済重視の菅首相が判断したのか。あるいは、仮に東京都が今後、このキャンペーンの除外対象になる場合、10月1日から対象にしたばかりなので「朝令暮改」「失策」と批判されかねないことを危惧しているのか。

 「ウイルスに国境はない」という医療関係者の警句が、あらためて思い出される。人が動けばウイルス感染は拡大しやすい。夏場にバカンスに出かけた人がウイルスを持ち帰ったドイツの事例もある。

 「安全で有効なワクチンの早期開発・承認と接種率向上こそが最大の経済対策だ」と筆者は考えているが、衆院選を控える中での政治的な思惑が原動力になって、3次補正は「まず金額ありき」的な本来は望ましくない形で、膨張してしまいそうである。

この記事はシリーズ「上野泰也のエコノミック・ソナー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。