
東南アジア外遊から帰国した後の10月末近くから11月上旬にかけて、菅義偉首相の動静に異変があった。平日の日課であるはずの散歩をしなくなったのである(図1)。
新聞各紙に掲載されている「首相動静」、その日の何時何分から何時何分まで何をしていたのかを「総理番」と呼ばれるマスコミ各社の担当記者が一日中張り付いて時系列で記録した記事を、筆者もチェックしている。誰とどのくらい長く首相が会っているかは、政策の動きを知る上で手掛かりになり得る。
首相就任から10月前半までは、毎朝6時45分前後から45分間前後、官邸内の敷地で菅氏が散歩をする日が多かった。外遊の際も、ベトナム・ハノイで現地時間10月20日の午前にホアンキエム湖の周りを散歩した(時間が不明であるため図には掲載していない)。
ところが、臨時国会が召集されてからは、日本学術会議の問題などで苦しい答弁を余儀なくされる中で疲れがたまったのか、それとも執務多忙で時間がなかったのか、10月29日を最後に菅首相の動静から「散歩」の文字がしばらく消えた。
散歩に表れる菅首相のコンディション
すばらしい実績を残しているプロスポーツ選手などには、日々の「ルーティン」を大切にしている人が多いように思う。毎日決まった手順で何かをこなすことを通じて、自分のリズムを確かめる。すると、自信を持って難しい課題にぶつかっていくことができる。
マスコミ各社の世論調査では、菅内閣の支持率はスタートダッシュでかなり高い数字になった後、低下するものが目立っていた。ちょうど首相が散歩をしなくなった時期と重なっていたように思う。しかし、11月9日から散歩が再開されると、複数の世論調査で菅内閣の支持率は小幅に上昇した。単なる偶然と片付けるかどうかは読者の方々の判断にお任せしたい。なお、菅首相の場合は100回の腹筋もルーティンだと報じられているが、こちらが続いているかどうかは「首相動静」からはうかがい知れない。
そんな菅首相でも手を焼いているのが、新型コロナウイルスである。「感染第3波」が日本列島に襲来しており、経済重視の政策運営に黄信号がともっている。
コロナの問題はこのコラムでも何度か取り上げたが、ここでワクチンについて少し考えてみたい。
11月9日に米製薬大手ファイザー、16日に米バイオ医薬大手モデルナ、23日には英製薬大手アストラゼネカが、新型コロナウイルスのワクチン開発が順調に進んでいるという内容を発表した。3週連続の、月曜日の明るいニュースである。株式市場は当然、買いで反応した。
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