もし本当に食事代で困っている人が多いのならば、12月1日から全都道府県での展開になる、25%のプレミアムが付いたおトクな食事券の事業(予算額868億円)もまた、世の中でもっと注目されているはずである。だが、少なくとも筆者の周囲ではこちらは全く話題になっておらず、「Go To イート」は前倒しで終わったと思っている人がほとんどである(ただし、この事業がすでに開始された県では、売れ行きの滑り出しは順調のようである)。

 SNS(交流サイト)社会になってからそうした傾向が強まっているように思うのだが、ちょっとした「抜け穴」的なワザが見つかると、すぐにネット上で拡散して、興味本位からゲーム感覚でそれを実際に自分でやってみる人が出てくる。

 「Go Toイート」の場合、SNS上で最初に話題となったのは、居酒屋「鳥貴族」で焼き鳥を1つだけ注文して500ポイント以上を入手する「錬金術」である。差額分は丸もうけになる。これはまずいと判断した政府は運用を手直しして、昼食は500円以上、夕食は1000円以上の注文をポイント付与の条件にした。

 次に話題になったのが、「無限くら寿司」である。多くの人がご存じだろう。キャンペーンに参加している回転寿司店を予約して来店し、1000円以上食べて、1000ポイントを得る。次にまた同じ店に行き、1000円分食べて、前回来店時に入手した1000ポイントで精算する。すると、また1000ポイントが手に入る。

無限ループを止めなかった政府

 「無限ループ」とも呼ばれるこの「裏技」流行については、政府は止めようとしなかった。11月6日の参院予算委員会で西村康稔経済再生相は、「制度として認められている」「厳しい状態にある方の負担軽減や、飲食店の支援につながる」「認められたやり方でうまく使っていただければいい」と述べて、こうした手法を容認した。

 世の中にこの手法が知れわたって広く利用されており、この時点で運用を見直そうとしても、もはや手遅れだった観がある。その1週間後、農水省はキャンペーンの予約受け付けが終了間近だと発表した。

 加藤勝信官房長官は11月16日の記者会見で、「Go To イート」で消費者が手にしたポイントの約9割が未使用であることを明らかにした上で、ポイント利用が今後進むことにより「飲食需要喚起の効果が継続していく」と述べた。

 だが、そう割り切ってしまってよいものだろうか。今回のキャンペーンが景気刺激策の前例となり、将来さらに大きな規模で展開される可能性があることに鑑みると、延べ人数ではなく実人数で何人がこのキャンペーンを利用したのか、それらの人々の属性はどのようなものかなど、可能な範囲で実際に何が起きたのかを検証することが必要だろう。

 また、利用した人の多くが気付かされたと思うが、予約サイトに載っている飲食店のうち、このキャンペーンに参加したお店は、決して多数派ではなかった。予約サイトに掲載してもらうために支払う手数料の存在を考えて、乗り気になれなかったお店は少なくないようである。飲食店のうち、個人経営ではなく規模が比較的大きい、経営状態に相対的に余裕がある店だけを支援するキャンペーンになってしまった可能性もある。

 さらに言えば、こうしたキャンペーンには、コロナ危機の下で蓄積した「ペントアップ(繰り越し)需要」を表に出させる効果に加えて、将来の需要の先食いをさせるという効果もある。自己負担が少ない形で外食を積極化した人々が、通常の料金に戻った際に、それまでと同じように飲食店を利用してくれるだろうか。筆者は懐疑的である。

 これは、リピーター的にキャンペーンを何度も利用して高い割引率を享受している人が多いと筆者が推測している、経済への影響度合いが格段に大きいキャンペーン「Go To トラベル」についても、十分当てはまる話である。

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