英国では再び都市封鎖(写真:AP/アフロ)

 米商務省が10月29日に発表した米国の7~9月期の実質GDP(国内総生産)事前推定値(速報値)は前期比年率33.1%増になった。比較可能な1947年以降で最大の伸び率である。大統領選挙戦の最終盤で出てきた数字であり、現職のトランプ大統領はこの数字を自らの実績として選挙戦中に誇らしげに引き合いに出した。

 だが、新型コロナウイルス感染拡大に見舞われた米国経済は、それよりも前に大きく落ち込んでいた。1つ前の4~6月期は同マイナス31.4%という過去最大のマイナス幅。1~3月期もマイナス成長だった。GDPの水準は「コロナ前」には戻っておらず、7~9月期の数字は前年同期比で見るとマイナス2.9%である。

 同じ日にユーロスタット(欧州連合統計局)が発表したユーロ圏の7~9月期の実質GDP速報値は前期比プラス12.7%になった。年率換算するとプラス61.1%という驚異的にさえ思える伸びである。だが、流れはすでに述べた米国と同様で、前年同期比はマイナス4.3%である。

 経済活動の増減を示す包括的な統計であるGDPは、米国やユーロ圏、そして日本を含むほとんどの国は、四半期ベースで公表している。

 だが、これでは景気のベクトルの変化をできるだけ早く把握しようとする場合には不便だとも言える。例えば、その四半期の最後の月にかけて景気が加速するという変化が生じていても、四半期平均でならされて出てくるGDPの数字からは、それがわからない。やむなく他の種類の経済統計を参照しながら判断していくことになる。

第2波地域でこれから起こるのは「景気失速」

 そして、新型コロナウイルスの感染拡大「第2波」に見舞われている欧州などでこれから起ころうとしているのは、景気回復の加速ではなく、失速(再度の景気後退)である。

 地面にぶつかったボールがある程度の高さまで上がってくるものの、徐々に勢いが弱まり、結局また地面に向かっていくイメージを、筆者はどうしても思い描いてしまう。

 G7(主要7カ国)に属している国々のうち、カナダと英国では、政府の統計部局から四半期ベースに加えて月次ベースでも、実質GDPが公表されている。それらの2019年1月以降の推移を、ここで見ておきたい。季節調整済みの金額を19年1月=100に筆者が換算した上で、グラフにしている(図1)(図2)。

■図1:カナダの月次GDP(実質)
(出所)カナダ統計局の公表データより筆者作成
■図2:英国の月次GDP(実質)
(出所)英国統計局(ONS)の公表データより筆者作成

 まず、カナダ。この国の月次の実質GDPは、10月末に公表された8月分が直近データであり、前月比プラス1.2%。4カ月連続の上昇で、市場予想の同プラス0.9%は上回ったものの、7月の同プラス3.1%からプラス幅は大きく縮小した。8月分の前年同期比はマイナス3.8%である。

 カナダ統計局では、次回9月分は前月比プラス0.7%にとどまりそうだと暫定的に見積もっている。前月比プラス幅は着実に縮小してきており、景気回復のモメンタム(弾み)は落ちてきている。経済的な結びつきが深い隣の米国などで新型コロナウイルス感染「第2波」が起こっており、カナダ経済にも悪影響が及ぶ。7~9月期はプラス成長を確保する可能性が高いものの、次の10~12月期は景気回復の息切れ感を鮮明に示す数字になりそうである。

 次に、英国。この国の月次の実質GDPは、10月9日に公表された8月分が最新データであり、前月比プラス2.1%。こちらも4カ月連続の上昇で、「コロナ前」の2月との対比では90.8%の水準まで回復した。だが、8月の前月比プラス幅は7月のプラス6.4%から大きく縮小した。

 ウイルス感染の脅威がなかなか消滅しないため、家計や企業の多くは慎重な行動をとり続けている。さらに、英国や欧州大陸のいくつもの国は、感染「第2波」襲来を受けて、政策的に人の移動を制限したり、店舗の営業を禁止したりする「ブレーキ」の強化を余儀なくされている。

続きを読む 2/2 V字回復もないことはないが……

この記事はシリーズ「上野泰也のエコノミック・ソナー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。