全4617文字
鼻をかむトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ米大統領は10月5日夕(日本時間6日朝)、ワシントン近郊の軍医療センターを退院し、ホワイトハウスに戻った。「大統領の容体はこの24時間、継続的に改善」しており、「まだ完全に危機を脱したわけではない」ものの、ホワイトハウスに十分な医療設備があるので退院しても問題ないと、大統領専属のコンリー医師は説明した。

 とはいえ、もともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬である「レムデシビル」に加えて、重症患者に対して通常用いられるステロイド系の抗炎症薬「デキサメタゾン」を投与され続けるなど、早期に退院して選挙戦に戻るためにトランプ大統領はかなり無理をしたのではないかという疑念がくすぶる。

 この「デキサメタゾン」については、気分変動、攻撃性、錯乱などの副作用のリスクが専門家の間で指摘されていると、ロイター通信は報じた。国際骨髄腫財団によると、視界不良や不整脈などの身体症状のほか、人格変化や思考困難などの精神症状が副作用として出る恐れがあるという。

 実際、このステロイド系薬剤の副作用が出たのではないかと推測する人もいた不安定な言動が、退院直後のトランプ大統領にはいくつかあった。

 大統領は退院から一夜明けた6日、「大統領選が終わるまでコロナ対策を巡る協議を停止するよう指示した」「私は大統領選での勝利後すぐに、勤勉な米労働者と中小企業に焦点を当てた大型の刺激策法案を通過させる」とツイートした。驚きのUターンである。

「ホワイトハウスは完全に混乱している」

 議会民主党との間で続けられてきた追加経済対策を巡る協議については、ペロシ下院議長とムニューシン財務長官の間で打開の糸口が見いだされつつあると市場はみていたので、株価は急落した。

 ペロシ下院議長は声明で、「ホワイトハウスが完全に混乱していることは明らかだ」と批判。民主党下院議員らとの電話会議の場で同議長は、トランプ氏の思考は治療で投与されたステロイド薬の影響を受けている可能性があるとも述べた。

 ところが、7日になるとトランプ大統領は、航空業界の支援や家計への現金給付といった個別の案件での与野党協議継続には前向きだという姿勢を示した。そして、9日には、民主党案を上回る規模の追加経済対策を要望すると、ラジオ番組で突然言い出した。議会共和党の同意をとりつけるでもなく、独断でまた姿勢を変えた。ちなみに、上院共和党のトップであるマコネル院内総務は、両党の主張はなお隔たりが大きいとして、早期の追加経済対策協議の妥結はないだろうという見方である。

 もう1つ、トランプ大統領が「忠臣」である2人を、退院の数日後に突然強く非難したことにも違和感が漂った。大統領は8日のFOXニュースの電話インタビューで、政敵に対する調査が不十分だとして、ポンペオ国務長官とバー司法長官を批判した。

 「両氏は政権内でトランプ氏に最も近いとされ、トランプ氏がやり玉にあげるのは珍しい」「ポンペオ氏はトランプ政権で米中央情報局(CIA)長官を経て、国務長官に就任。トランプ氏の意向を外交政策に忠実に反映し、米メディアや議会から批判が出ればトランプ氏の擁護に回ってきた。バー氏もロシア疑惑についてトランプ氏を『推定無罪』と結論づけていた」と、日本経済新聞の記事は解説を加えていた。