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(写真:PIXTA)

 いわゆる「アベノミクス相場」で海外の投資家が大きく積み上げた日本株の買い越しが「完全消滅」した。しかも驚くべきことに、そうなったタイミングは安倍晋三首相が正式に退任したタイミングと、見事に一致していた。

 野田佳彦首相(当時)が国会で行われた2012年11月14日の党首討論で衆院解散を表明した時に始まった日本株の急騰局面が、アベノミクス相場である。衆院選における自民党の大勝を経て、第2次安倍内閣が発足した。その初期には「3本の矢」をキャッチフレーズとする「アベノミクス」が展開され、これに期待をかけた海外勢による日本株の買越額が累増していった。

 筆者は、原則として毎週木曜日の朝8時50分に財務省から発表される公式統計である「対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース、週次)」に含まれている対内証券投資の計数のうち、「株式・投資ファンド持分」をウォッチしている。アベノミクス相場が始まった日を含む週以降の彼らの累積買越額は、一時25兆円を超えるところまでいった(図1)。日本経済についてほとんど知らない遠い国の投資家が、日本株であれば何でもいいとばかりに買いを入れていたとされる局面である。

■図1:対内証券投資 株式・投資ファンド持ち分 週次データのネット(取得-処分)累積額
注:スタートは「アベノミクス相場」が始まった2012年11月14日を含む11月11~17日の週
(出所)財務省資料よりみずほ証券金融市場調査部作成

海外勢が売り越す週が徐々に増え……

 しかしその後、「日本経済再生」への過大な期待の反動が徐々に広がる中で、海外勢が日本株の売り越しに回る週が、徐々に増えていった。累積買越額は15兆円前後にしばらくとどまっていたものの、2018年から明確な右肩下がりになった。外国の投資家が日本経済について抱く関心も、はっきりと薄れていったように思う。

 財務省が9月17日に発表した9月6~12日の週のデータの時点で、上記の累積買越額は2136億円まで縮小していた。アベノミクス相場の「貯金」が完全になくなるまであと一歩の数字である。だが、連休の関係で、その次のデータ発表は10月1日にずれ込んだ。9月13~19日と20~26日の2回分が、まとめて発表される段取りである。

 だが、これとは別に、民間の週次の統計がある。9月28日に東京証券取引所が発表した9月第3週(14~18日)の投資部門別株式売買動向(東京・名古屋2市場、1・2部と新興企業向け市場の合計)を見ると、海外投資家は大幅な売り越し(マイナス5275億円)になっていた。

 財務省の統計とはカバレッジが異なるものの、これら2つの統計の大まかな傾向は同じである。したがって、10月1日に財務省から出てくる9月13~19日の週の数字はまとまった幅で売り越しになるだろうと、筆者は予想した。そして、実際に出てきた数字は1兆5257億円という大きな額の売り越しで、アベノミクス相場開始以降の累積額はついに売り越しに転じた。