ニュージーランドでも、経済成長は2四半期連続のマイナス。4~6月期は前期比マイナス12.2%で、約9年半ぶりに景気後退に陥った。雇用情勢が悪化し、物価が低迷していることから、RBAもRBNZも、「さらに一歩先」の緩和策を模索している。

 RBAのデベル副総裁は9月22日に行った講演の中で、追加緩和の選択肢を4つ挙げた。

 すなわち、①3年よりも長い年限の国債を買い入れる(3年物国債利回りへのターゲット設定は変更せず、それを補完するものという扱い)、②為替介入(ただし、豪ドル相場がファンダメンタルズ=経済の基礎的条件にほぼ沿っていることから、現時点での効果は不明確)、③政策金利をプラス圏の範囲内で引き下げ(他国の例も念頭に金融市場は0.10%を想定)、④マイナス金利導入(ただし、短期的に為替相場押し下げに寄与できても、中期的には金融システムへの影響などを通じて効果は減殺され得ると副総裁は説明)である。

ニュージーランドは政策金利の引き下げが有力

 これらの中では③が有力視されており、早ければ10月に実施されるのではとの予想が出ている。

 翌23日にはRBNZが金融政策委員会を開催し、金融政策の現状維持を決めた。0.25%のOCRは据え置き、1000億NZドルを上限とする大規模資産買い入れプログラムは続行である。声明文はその上で、さらなる金融緩和が必要になる場合に向けた進展があったとした。

 追加緩和の選択肢として検討されているのは、①貸し出しに向けたファンディングプログラム(FLP)、②OCRのマイナス圏への引き下げ(マイナス金利導入)、③外国資産の買い入れ、④金利スワップである。そして、①を年末までに導入する方針が打ち出された。

 では、FRBはどうだろうか。FFレート誘導水準のプラス圏での下げ余地は乏しく、規模が大きい米短期金融市場の機能維持の必要性などから、マイナス金利導入への反対論がFRB内では支配的である。トランプ政権の強い意向を踏まえると、為替介入や外国資産買い入れは論外だろう。残る手段は中長期国債利回りへのターゲット(キャップ)設定だが、すでに述べたように米国債は極めて狭いレンジ内で安定的に推移しており、利回り水準も低いことに鑑みると、いまFRBが長期金利対応で動く必要性は乏しい。

 このように考えると、今回の局面ではRBAやRBNZの動きは「FRBの先行指標」にはなりにくい。FRBはゼロ金利政策を、日銀の異次元緩和のキャッチフレーズのように「粘り強く」、事実上「エンドレス」に続けていくことになるだろう。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「上野泰也のエコノミック・ソナー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。