その間、支持率の伸び悩みに焦る野党の側では、財務省出身者を含めて、「消費減税」を主張する政治家が増えた。この主張は自民党内でも一定の広がりを見せている。度合いの差はあるにせよ、与党も野党も現時点では、財政拡張バイアスをかなり帯びた政策を模索していると言えるだろう。最近ではむしろ野党の方が与党よりも財政規律を緩める方向に軸足を傾けている感が漂う。これは本来的には、決して望ましいことではないだろう。

 野党内でも政策論争が展開される機会があった。9月7日に告示されて10日に投開票された、合流新党の代表選である。旧立憲民主党の枝野幸男代表と、旧国民民主党の泉健太政調会長の争いになり、枝野氏が勝利したわけだが、両者がともに主張したのが、消費減税である。

 筆者が驚かされたのは7日の共同記者会見の冒頭発言で泉氏が述べた内容である。「景気は大変厳しい状況だ。消費税は一時的に0%とし、インフレ率2%に回復するまで継続し、消費・景気の回復を最優先したい」と述べたのだ。仮にこの案に沿うと、消費税率0%の継続期間は、日銀が掲げる「物価安定の目標」2%が達成されるまでの間にするという、一種のヒモ付けと考えられる。

事実上の消費税廃止に?

 だが、このコラムでこれまで何度も述べてきた通り、構造的な物価抑制圧力やコロナ後の「新常態」ゆえに物価目標がいっこうに達成されない場合には(筆者を含む市場参加者の多くはそう考えている)、消費税率0%の時間帯がエンドレスに続いていくことになる。これは、実態としては消費税の廃止に等しい。

 記者会見での泉氏の発言によると、社会保障財源は消費税だけに頼る必要はなく、消費減税時は国債を発行するということなので、景気への影響を考慮して日銀が長期国債買い入れを行って金利上昇を抑制している現在の状況が永続することにもなってしまう。そのことは財政規律を一段と緩めることにつながり、不要不急の歳出が予算に毎年度計上され続けるだろう。

 代表選に勝利した枝野氏はそこまで踏み込んでいるわけではないものの、消費税や所得税を時限的に減免することや、税体系全体の見直しを主張しており、次の衆院選では自民党に対する対抗軸として消費減税を前面に出すとしている。

 なお、自民党から無所属を経て新しい立憲民主党に加わった中村喜四郎衆院議員からは、「コロナ対策と消費税を絡めることが適当なのか。いったん下げてしまえばまた上げることは簡単ではない。消費税減税という対立軸はひ弱だなと思う」という声が出ており(9月22日付東京新聞)、かなりの説得力があるように思う。

 これに対し、菅新首相は消費減税というアイデアを一貫して否定しており、将来の消費増税の必要性にも言及している。この消費税についての考え方だけを取り出せば、野党は財政拡張志向で自民党は財政健全化志向だという色分けになってしまいがちだが、すでに触れた通り、アベノミクスの下で財政の健全化はあまり進まなかったのが現実である。

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