全3554文字
朝鮮戦争の休戦協定締結から67年となった2020年7月27日、故・金日成主席と故・金正日総書記の像を訪れる北朝鮮の人々(写真:AP/アフロ)

 筆者はマーケットエコノミストとして多様な情報を収集・分析しつつ、昔からの個人的な関心もあって日ごろ北朝鮮ウオッチをしているのだが、7月は興味深いニュースにいくつか出くわした。

 まず、韓国の聯合ニュースが1日に報じた、北朝鮮の人口動態である。国連人口基金(UNFPA)と韓国の人口保健福祉協会が公表した2020年の「世界人口現況報告書」によると、北朝鮮の平均寿命は72歳で、韓国の83歳よりも11年短い。世界平均(73歳)も下回っており、この国では長生きするのが難しいということが、数字で示された。栄養状態が良好ではないこと、医療体制の水準の低さが関係していると推測できるだろう。  

 また、北朝鮮の合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が一生の間に産む子どもの数に相当する)は1.9になった。世界で最低水準である韓国の1.1は上回ったものの、北朝鮮でも少子化現象が起きているとのことで、人口置換水準(人口が長期的に増えも減りもせずに一定となる出生率の水準)とされる2.07を下回った。生きにくい世の中では、子どもは増えにくい。

北朝鮮のTOEFLが韓国と同レベルに

 聯合ニュースは翌2日、今度は北朝鮮の学生の英語力に関するニュースを配信した。米国の大学などへの留学を希望する際に英語能力テストとして使われるTOEFLを受験した北朝鮮の学生の成績が向上を続けており、昨年は韓国と同レベルに達したことが分かったという。これは北朝鮮発の宣伝めいた報道ではなく、TOEFLを主管する米ETSが保有する2010年から10年間の韓国と北朝鮮のTOEFL平均点の統計数値を基に、米政府系ラジオ放送局の自由アジア(RFA)が報じたものである。

 筆者が受験したはるか昔とは違い、現在のTOEFLは4つのセクション(リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング)のスコアを合算するiBTという形式のもので、120点が満点となる。北朝鮮と韓国の受験生の昨年の平均点は83点で、世界平均と同じ。北朝鮮の平均点は2010年の78点から5点も上昇した。RFAによると、北朝鮮にはETSが公式に認めた試験代行機関がなく、北朝鮮の学生は中国、欧州など第三国で受験していると推定され、数字には少数の在日本朝鮮人によるものも含まれている可能性があるという。ちなみに、日本の平均点は毎年70点前後で、両国に比べるとかなり低い。

 金正恩朝鮮労働党委員長が少年時代をスイスのベルンで過ごしたことはよく知られている。北朝鮮のエリート層は、中国などと同じく、英語圏を含む海外の学校に子を送り出して見聞を広げさせようとしているのだろうか。それとも、北朝鮮の国内で語学の能力が優秀な学生を積極的に育成しているのだろうか。

 そんなことを考えていたら、北朝鮮関連のヒット報道をいくつも出してきた東京新聞の記者、城内康伸氏による最近の著書『金正恩の機密ファイル』(小学館新書)に載っていたエピソードを思い出した。

 北朝鮮事情に詳しい消息筋によると、2004年7月に訪朝したロシアのラブロフ外相は平壌外国語大学で、童話「トラに勝ったハリネズミ」をもとにした演劇を鑑賞したという。同大学付属の外国語学校の生徒たちが脚色して演じたもので、ロシア語による演劇にラブロフ氏は大いに感心したそうである。