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子や孫に「(政策当局者として)いったい何をしたんですか」と後日問いかけられて返答に窮するようなことにはしたくない、というクリスティーヌ・ラガルドECB総裁の胸中は(写真:ロイター/アフロ)

 欧州では、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)の議長であるセンテノ・ポルトガル財務相が2期目を目指さないことになったため、その後任選びがあり、アイルランドのドナフー財務相が2回の投票に勝利して7月13日に就任した。

 これより前、次期ユーログループ議長選びに名乗りを上げた1人だったスペインのカルビニョ副首相・経済相は3日、新型コロナウイルス感染拡大への対応で債券を発行することによって欧州連合(EU)が負うことになる規模の大きな債務に関して、「将来的に返済される」「債務の長期的な持続可能性は保証されており、欧州がこれまでもそうしてきたように、責任を持って計画し、行動している」と言明した。

財源調達への責任を強調したスペイン副首相

 欧州委員会が提案した7500億ユーロの復興基金が実現する場合、財源はEUが発行する債券になるとみられているわけだが、その償還に向けた将来の何らかの形での財源調達にしっかり責任を持つ姿勢を強調した発言とみられる。また、そうした発言をすることが次期ユーログループ議長争いでけっして不利にならないという判断が、その背後にはあったと考えられる。

 このカルビニョ発言よりも1カ月以上前の話になるのだが、英経済紙フィナンシャル・タイムズが6月1日付の1面真ん中に据えたのが、「EU予算部局トップが域内復興の財源となる事業税への支持を求める(EU budget chief seeks backing for business tax to fund bloc recovery)」と題した記事だった。欧州委員の1人で、予算・総務の担当(欧州委員長直轄)であるヨハネス・ハーン氏(オーストリア出身)が、EUにとって独自財源となる大企業7万社対象の課税案への支持を、加盟各国に求めているという内容である。

 7500億ユーロという巨額の国債の償還財源を賄う目的で、EUの歳出予算を削減したり、加盟各国の拠出金を増やしたりすることは、政治的にみて現実的ではないと、ハーン氏は主張した。そこで、上記の新税(最終的に年間150~200億ユーロの税収を目指すという)に加えて、炭素税や新たなデジタル課税といった独自の歳入源をつくり出そうというのが、ハーン委員の構想である。

 日本ではどうだろうか。20年度は2度の補正予算で増発される分を含めて、計90兆1589億円という異例に大きな金額の新規国債が発行される。だが、早ければ今秋にも解散総選挙という可能性が排除できない政治情勢もおそらく微妙に影響しつつ、「まずは危機対応が優先されるので財政健全化はそのあとの話だ」という趣旨の発言が、政府・与党サイドからたびたび聞かれている。

 消費減税で足並みをそろえるべきだという意見が野党内の一部にあるので、与党としては、「増税」方向のメッセージを時期尚早のタイミングで持ち出して選挙に不利な材料を自らつくり出すことがためらわれる部分もあるのだろう。

 麻生太郎副総理・財務相は5月29日の閣議後の記者会見で、新型コロナウイルスの収束後に財政規律を取り戻していくという観点で増税等を実施する必要性を考えているかとの問いに対し、「われわれとしては景気が回復しないと、経済が活性化しないと、財務の方の改善、財政と言うかな、それの改善もできないということになりますので、われわれとしては、税収増というものを増税に頼るというのではなくて、景気回復によって税収が伸びるということを目指すというのが、まず第一だと思いますけどね」と返答していた(時事通信による詳報から引用)。

 この発言については、「東日本大震災では当時の民主党政権が復興増税をしたが、今回は増税に否定的な考えを示した」(共同通信)という受け止め方が一般的である。