少し角度を変えて、マクロ経済統計の1つである「家計調査」の4月分で消費支出の実質増加に寄与した代表的な品目を、総務省の公表資料から拾い出してみよう。並んでいる品目は、「自動車購入」「自動車保険料(任意)」「豚肉」「鶏肉」「郵便料」である。

 これらのうち「自動車購入」は、サンプルバイアスで実態に沿わずに強く出た可能性が高い(4月の新車販売台数は前年同月比大幅マイナスである)。「自動車保険料(任意)」と「携帯電話通信料」は口座引き落とし(あるいは口座振り込み)が多いのではないか。「郵便料」は現金支払いがほとんどだろう。とすると、残るのは「豚肉」「鶏肉」であり、外出自粛の中で需要が増した「中食」の関連である。

 そうしたことも踏まえて考えると、どうやら4月には、スーパーマーケットで「中食」需要関連の肉類を含む食料品をいつもより多い金額で購入する、ドラッグストアで日用品を買いだめ的に購入する、外出回数や出向く場所の数をできるだけ減らすため近所のコンビニエンスストアだけで日々の買い物を済ませる(自宅近くのコンビニでの買い物だけで数週間生き延びたという話も筆者は耳にした)といった行動を人々がとる中で、電子マネーの1件当たりの決済金額が大きくなったと推測することができる。

 なお、東京都については小池知事が4月23日に「毎日の買い物を3日で1回程度に控えていただきたい」と都民に要請したことが、実際の行動に影響したとも考えられる。

レジ待ち時間の短縮のため配慮?

 そのほかにも、いろいろと考えられることはある。

 「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」を保つべく、床に貼られた目印に従って、前後の人と間隔をあけてレジ前に長い行列を作って待ち、やっと自分の順番が来る。そこで、現金支払いを選んでお釣りのやりとりに時間をかけるようだと、冷たい視線を背中に感じかねない。そこで、買い物はできるだけまとめてするようにして、それによるいつもよりも多い金額の支払いは、電子マネーで手早く済ませる。そのような思考および行動のパターンをとった人が、じわり増えていた可能性がある。

 また、外出自粛ムードの中、銀行のATM・CDに頻繁に出向くわけにもいかず、手元の現金が自然と少なめになっているので、できるだけキャッシュレスで決済しようとする人が増える。しかしこのことは、1件当たりの決済金額を押し上げるかもしれないし、逆に押し下げるかもしれない。

 自分が見聞きしたことも踏まえつつ、いろいろと思考は広がる。次回5月分以降の電子マネー統計はどのような数字になるのだろうか。興味は尽きない。

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