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日銀の黒田東彦総裁(写真:AP/アフロ)

 5月22日に開催した臨時金融政策決定会合で中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入を決定した際、日銀は3つの措置を合わせた「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」(特別プログラム)というコンセプトを、打ち出した。総枠は約75兆円とされ、期限は2021年3月末までに設定された。

 内訳は、①CP(コマーシャルペーパー)・社債などの買い入れ(残高上限:約20兆円)、②新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ(資金供給の対象〈担保として差し入れられている民間債務〉:約25兆円〈4月末現在〉)、③新たな資金供給手段(資金供給の対象〈緊急経済対策における無利子・無担保融資を中心とする適格融資〉:約30兆円)、以上3つである。

「3つの柱」で見せてきた日銀

 その後、6月15・16日に開催された定例の金融政策決定会合では、この特別プログラムの総枠が拡大された。もっとも、事前に報道されていた通り、その件で新たな議決が行われることはなく、日銀による措置を整理した「日本銀行の新型コロナ対応」という公表文書の中で、特別プログラムの総枠が「約110兆円+α」に拡大したことが明らかにされた。

 このペーパーは、日銀の政策運営で最近目立っている大きな特徴である「見せ方の工夫」が、十分すぎるほどなされたものだった。英語版もしっかりホームページに掲載されており、海外投資家へのアピールを日銀が引き続き強く意識していることは想像に難くない。円高阻止のため、日銀はこんなに緩和を強化しているんですよ、ということである。

 この「日本銀行のコロナ対応」では、以下の3つの項目立てで日銀による対応措置が説明されていた。黒田東彦日銀総裁は6月26日に米ハーバード・ロースクールとPIFSが共催したオンラインイベントで、それらを「3つの柱」と呼んでいた。それぞれについて説明し、コメントを加えたい。

 (A)企業等の資金繰り支援 ~ 特別プログラム 総枠約110兆円+α(CP・社債など買い入れ:20兆円、新型コロナ対応特別オペ:90兆円<5月に決定した新たな資金供給手段を含む>)

資金繰り支援に110兆円+α

 5月22日時点の総枠75兆円から増えたのは、上記②「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ(資金供給の対象〈担保として差し入れられている民間債務〉)」と、③「新たな資金供給手段(資金供給の対象〈緊急経済対策における無利子・無担保融資を中心とする適格融資〉)」である。

 まず②については、公表資料「日本銀行が受入れている担保の残高」から、民間債務に該当すると考えられるものを合計すると、4月30日時点で25兆580億円だったが、5月29日時点では27兆3218億円になっており、約2.3兆円の増加である。

 次に③。5月22日時点では新型コロナ対応特別オペは②約25兆円+③約30兆円=約55兆円だったのだが、6月16日には約35兆円増加して約90兆円になっていた。政府の資料によると、国会で可決成立した20年度第2次補正予算では、民間金融機関の無利子・無担保融資の融資規模が拡大されて「28兆円規模(約24兆円→約53兆円)」になった。

 5月22日時点の75兆円に、②で2.3兆円、③で28兆円、計30兆円強を加えれば、105兆円強になる。事前に一部のマスコミから観測報道が出ていた「100兆円超」という数字とも合致する。