一方、今回の米景気後退が(市場の大方の見込み通りに)短期間で終了し、11月時点で景気後退をすでに脱していた場合はどうだろうか。興味深い前例が1つある。

 1980年のレーガン大統領候補(共和)は、80年1~7月というこれまでで最短の景気後退が終わった4カ月後の選挙で、現職のカーター大統領(民主)に勝利した。ところが、81年1月に大統領に就任した半年後の7月には次の景気後退が始まるという巡り合わせだった。もっとも、この1980年の選挙は、イラン米大使館人質事件への対応の拙さという外交面の失点からカーター氏の支持率が大きく落ちた中での選挙であり、経済動向とだけ結び付けることには無理がある。

トランプ再選予想がなお支配的

 トランプ大統領にとっては、景気後退からの早期脱却を財政で促しつつ、外交面の失点はできるだけ避けるのが上策になる。新型コロナウイルスの感染第2波がやってきたように見えていても、新規感染者数の増加は検査の件数が多いからだと強弁しつつ、「再びロックダウンするつもりはない」という経済活動優先の姿勢をできるだけ貫こうとするに違いない。

 なお、秋の大統領選の行方について筆者は、現時点では依然として、僅差ながらトランプ大統領の再選ではないかとみている。共和党内での支持の堅さ、民主党が中道と左派で考え方が違い過ぎて「一枚岩」になりにくいことなどが、その理由である。世論調査ではバイデン氏がかなり有利になっているが、トランプ支持者が答えたがらないために伝統的メディアの世論調査結果がバイアスを帯びやすいことは、前回の大統領選挙で実証済みである。金融市場でも、トランプ再選予想がなお支配的となっている。

 女性を指名すると公約しているランニングメート(副大統領候補)が誰になるか、その人選が民主党内での求心力の強化や無党派層からの支持増加に結び付くかどうかが、バイデン氏についての当面の重要ポイントになる。

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