筆者を含む民間エコノミストの一部は、景気は18年10月あたりにピークをつけて、その後は後退局面が続いているという見方をとっている。この場合、12年11月(第2次安倍内閣が発足して「アベノミクス」が展開され始める直前の月)を「谷」とする景気拡張局面は71カ月間で終了したことになり、戦後最長の景気拡張が安倍内閣の下で更新されたことにはならない(従来通り、02年1月の「谷」の翌月から08年2月の「山」までの73カ月間が最長記録になる)。

 しかも、19年10月に実施された8%から10%への消費税率引き上げは景気後退のさなかに行われたことになってしまう。安倍首相にとっては都合の悪い見方である。

 一方、新型コロナウイルス感染拡大への対応で景気状況が急変する直前の今年2月に、米国の場合と同様に景気が「山」をつけたという結論になる場合は、景気拡張は87カ月間になり、戦後最長記録となる。また、10%への消費税率引き上げのタイミングについて、安倍内閣が景気循環の面から批判を受けることもなくなる。

 いずれにせよ、米国と異なり日本の場合は、データの十分な蓄積を待ってから(かなり時間がたってから)判定が下されるのが通常であり、安倍首相の自民党総裁任期満了(21年9月)までに結論が出ない可能性もある。

景気後退下での大統領選は、与党に不利だが……

 さて、大統領選挙が行われる年に米国の景気のベクトルが変わったということになると、選挙の結果への影響が気になるところである。再選を目指すトランプ大統領は、人種差別に抗議するデモという新たな難題にも直面しており、失言もたびたび出ている。

 ここでは、過去の米大統領選(ただしNBERのホームページに景気の「ピーク(山)」「トラフ(谷)」の記載がある1854年12月以降)について、景気後退局面で11月の投票日を迎えたケースおよびその結果の一覧表を作成してみた<図2>。

■図2:景気後退局面のさなかに投票日を迎えた米大統領選挙の結果
■図2:景気後退局面のさなかに投票日を迎えた米大統領選挙の結果
(出所)全米経済研究所(NBER)、各種報道より筆者作成
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 この表を眺めると、過半数のケース(過去100年に絞れば5例中4例)で政権党の交代が起こっており、景気後退下での大統領選は与党に不利であることがわかる。仮に、今回の米景気後退が深刻な感染「第2波」到来などから予想外に長引いて11月まで続く場合、経験則からは、トランプ再選に強い逆風が吹きつけると言える。また、直近の事例4つではすべて民主党の候補者が勝利している。

 もっとも、そうした強い逆風の下でも再選を果たした1900年のマッキンリー大統領(共和)の例もある。

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