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ドナルド・トランプ米大統領(写真:AP/アフロ)

 米国の景気循環を判定する役割を担う全米経済研究所(NBER)は、1920年設立の非営利無党派の民間研究団体であり、米国の著名な経済学者が多数参画している。そのNBERの景気循環日付認定委員会(Business Cycle Dating Committee)が6月8日、景気の「ピーク」は今年2月であるとアナウンスした。わずか4カ月後という異例のスピード判定に至った根拠は、公表資料にしっかり記されている。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響から、雇用者数、実質個人消費や実質個人所得(除く移転所得)が3月に大きく落ち込んでいるため、悪化は各経済分野に十分広がったとした。2009年6月を起点とする米国の過去最長の景気拡張局面は、20年2月までの128カ月間で終了した。

 なお、四半期ベースでは景気の「ピーク(山)」は19年10~12月期であると判定された(20年3月に景気が大きく落ち込んでおり、月次ベースのピークが含まれない四半期であっても問題ないというのが、NBERの説明である)。

3つの「D」との兼ね合いに注目

 ここで議論の焦点になり得るのは、景気後退かどうかを判定する際に重視される「3つのD」との兼ね合いである。落ち込みの「深さ(depth)」と「波及度合い(diffusion)」はクリアしても、「持続期間(duration)」が短い場合、「踊り場」「ソフトパッチ」などとも呼ばれる短期間の調整局面とみなして後退とは認定しないのが通例だという点である。

 この点に関してNBERは、通常の景気後退の場合は数カ月(a few months)を超える落ち込みが必要になるものの、パンデミックや公衆衛生面への対応による今回の景気の落ち込みは、従来の景気後退とは特徴やダイナミクスが異なるとした。

 その上で、たとえ過去の景気後退よりも結果として短い期間にとどまるとしても、前例にない大きさの雇用・生産の落ち込みや経済全体に及んだ広範な影響が、景気後退であると判定することを正当化するとの結論を下したと、公表資料に記した。米国の場合、NBERが判定した過去最短の景気後退は6カ月間(1980年1~7月)だが、5月ごろを底に米景気はすでに最悪期を脱したもようであり、最短記録更新となる可能性が高い<図1>。

■図1:米国の景気循環(景気のピークとトラフ;月次ベース)
(出所)米NBER

 話は脇道にそれるが、日本の場合、内閣府経済社会総合研究所は新型コロナウイルスがもたらした今回の景気悪化を後退と認めるだろうか。米国でNBERがそうしたように持続期間について今回はハードルを事実上下げて、景気後退局面だと仮に認める場合には、景気の山をいつに設定するかが注目の的になる。