3月26日にテレビ会議方式で開催されたEU首脳会議は、新型コロナウイルス感染封じ込め策の解除に向けた「出口戦略」や経済再建計画の策定に着手するといった基本線では一致した。だが、最大の焦点になっていた各国の財政へのEU共通の支援策に関しては合意できず、結論を先送り。2週間以内に具体案をまとめるよう財務相らに指示するにとどまった。

 イタリアやスペインなど9カ国が、「コロナ債」と呼ばれるユーロ圏共同債の発行によって安定した資金調達をすべきだと主張した。これに対し、南欧諸国の財政規律のさらなる緩みを招きかねず、健全財政を守ってきたことに由来する自国の低金利での資金調達メリットも失いかねないと警戒する「北」のオランダやドイツなどが反対姿勢をとった。ESM(欧州安定メカニズム)の与信枠活用でも対立があり、利用の際の条件の厳格化を求めるオランダが妥協を拒んだ。

テレビ会議を続けるうちに……

 上記を受けて、ユーロ圏財務相会合が、4月7日にテレビ会議方式で開催された。ちなみに議長のセンテーノ氏は「南」に属するポルトガルの財務相である。7日午後に始まったこの会議は翌8日の朝まで延々16時間も続けられた。だが、このマラソン協議でも上記の対立点は解消されず、いったん水入り。9日に再協議することになった。

 そして9日に、やはりテレビ会議形式で開かれたユーロ圏財務相会合は、総額5400億ユーロ(約64兆円)の経済対策で合意にこぎつけた。最大2400億ユーロ相当のESMの与信枠活用、中小企業などへの融資に公的保証を付与する2000億ユーロ規模の資金繰り支援策、そして1000億ユーロ規模の基金を創設しての雇用維持策が柱である。

 もっとも、危機対応の財源として「コロナ債」を発行するかどうかについての対立は、この会議でも解消されず、首脳レベルで結論を出すことになった。根本的対立点について、今度は各国首脳にボールが投げ返された形である。

 4月23日、EUはテレビ会議方式で首脳会議を開催した。だが、ここでも「コロナ債」問題を軸とする対立は解消されなかった。コロナウイルスに由来する経済的悪影響が甚大なイタリアなどを支援するために基金を創設し、EUの次期中期予算(2021~27年)と組み合わせて対応する方向では一致したものの、基金の規模や財源など具体案の検討は欧州委員会に委ねられることになった。この時点では、具体案は5月6日までに提示されると報じられていたが、実際にはそうはならなかった。

 だが5月19日になり、画期的な動きがあった。フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相がテレビ会議で話し合った末、5000億ユーロ規模の復興基金の創設案を打ち出したのである。共通の債券をEUが発行して資金を調達する。国別の分配額(返済の必要がない補助金の供与となる)は、必要に応じて、すなわちコロナウイルスがもたらした損害の大きさに応じてイタリアなどに多く支払われる方向で決まる。

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