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テレビ会議は以前より日常的な風景になったが……(写真:European Union/新華社/アフロ)

 政府が「新しい生活様式」を促していることもあり、会社員などが働くスタイルとして、在宅勤務(テレワーク)が定着する方向である。会社側からすれば、高い賃借料を支払っているオフィススペースを徐々に減らすことが可能になるし、地方出張が減ればその関連の経費も少なくて済む。

 もっとも、各人への通勤費支給を定期券代のままとするかどうかは、やや難しい問題ではある。一方、働く側からすれば、会社への行き帰りの通勤時間がなくなるので、その時間の有効活用が可能になる。自宅にいることで、自分のペースで落ち着いて仕事ができるから効率が上がるという人もいるだろう。

 とはいえ、仲間どうしがふだんなかなか対面しない分、会社組織の一体感が薄れるのではという懸念もあろう。

 通信インフラの問題もある。サーバーへの負荷が過大になることでパソコンの反応速度が落ちると、作業効率は格段に低下する。小型カメラの映像などで姿を確認できない場合、仕事をせずに、どこかに行ってしまっている可能性もある。街中でよくみかけるウーバーなど、自転車による外食配達サービス。配っている人の中には、会社に無断で昼間に副業している人もいるのではないかと、筆者はにらんでいる。

腹の探り合いができない

 そうした中で、論点を1つ提供しているのが、オンラインによる映像と音声の伝達を用いた会議方式、いわゆるテレビ会議の善しあしである。

 限られたスペースしか画面に映らないのでワイシャツの下は実は短パンの男性がいるとか、米国ではパソコンの小型カメラへ下向きに顔を映すと二重あごに映りやすいことが問題になっており、整形手術をする、テープを貼ってあごの肉を持ち上げる(!)といったさまざまな対処がなされているという記事が米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたとか、話題はいろいろある。

 ここでは、テレビ会議方式のおそらく最大の難点と考えられる、会議の部屋をちょっと離れての参加者どうしの腹の探り合いといったテクニックが使えないデメリットを、欧州の実例から考えてみたい。欧州の場合は「プレーヤーの数が多すぎる」という難点が初めからあり、意見がなかなかまとまらないことがよくあるのだが、テレビ会議という方式の問題点もまた、このところの経緯から浮き彫りになっているように思う。

 EU(欧州連合)によるヨーロッパの経済統合は、共通通貨ユーロの流通・ECB(欧州中央銀行)による単一の金融政策運営が通貨統合に参加した国では確立する一方で、各国の主権問題(ポピュリスト政党は自国の独自性・権利を主張しがちである)などから財政の面では統合がなかなか進まないという、バランスが悪い状態のままである。

 ギリシャやスペインなどが中心になった欧州の債務危機は、そうしたユーロ圏の弱点を直撃した出来事だった。そして今度は新型コロナウイルスという、知られていなかった新しい「敵」が現れており、ユーロ圏の結束力の強さが再び試されている。だが、新型コロナウイルス感染拡大に起因する経済的な悪影響に結束して対処する方策を話し合うはずのEU・ユーロ圏の会議が難航し、結論を先送りする場面が目立っている。