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観光客は戻ってくるのだろうか…(写真:AP/アフロ)

 政府は5月25日、残っていた首都圏と北海道についても緊急事態宣言を解除した。夕方に発表される東京都の新型コロナウイルス感染者数が低水準にとどまる⽇が増えたことから、経済に対する「ブレーキ」が緩められる日はどうやら近そうだと多くの人が感じていたので、世の中にさほどの意外感はない。

 月次で結果が公表される企業景況感の調査、QUICK短観の5月分が同月18日に発表された(調査期間:4月28日~5月13日)。調査対象は上場企業で、今回の回答社数は333である。

 注目が集まりやすい業況判断DI(回答比率「良い」-「悪い」)は、製造業がマイナス33(前月比マイナス7ポイント)で、4カ月連続で低下し、09年6月以来の水準である。非製造業はマイナス21(同マイナス9ポイント)で、3カ月連続の低下。新型コロナウイルス感染拡大抑止策が影響して、いずれも厳しい結果になった。

個人消費も設備投資も2四半期連続で前期比マイナス

 だが、この統計でより注目すべきは、生産・営業用の設備や雇用人員の過剰感が製造業で鮮明になり、非製造業ではそれらの不足感が急速に薄まってきた点である。

 生産・営業用設備DI(回答比率「過剰」-「不足」)は、製造業が+10(前月比+6ポイント)、非製造業がマイナス3(同+5ポイント)になった(図1)。雇用人員DI(算出方法は上記DIと同じである)は、製造業が+9(前月比+14ポイント)、非製造業がマイナス23(同+14ポイント)である(図2)。

■図1:QUICK短観 生産・営業用設備DI (回答比率「過剰」-「不足」)
(出所)QUICK
■図2:QUICK短観 雇用人員DI (回答比率「過剰」-「不足」)
(出所)QUICK

 同じ5月18日に内閣府から発表された1-3月期のGDP1次速報では、国内需要の2本柱である民間最終消費支出(個人消費)と民間企業設備(設備投資)が、いずれも2四半期連続で前期比マイナスになった。

 新型コロナウイルスとの闘いは、ワクチンの開発・普及に至るまで長期戦になる見込みで、専門家の多数意見では、越年する可能性が現状高い。しかも、「新しい生活様式」が浸透・定着していく流れに鑑みると、緊急事態が解除された後の個人消費は、脆弱な回復力にとどまらざるを得まい。

 世界経済全体の回復も弱いとするなら、輸出も伸び悩むだろう。従って、企業は「コロナ後の新常態」における生産設備や雇用人員の適正な規模を探りつつ、生産能力に絡む設備投資は抑制し、雇用に関してはさまざまな手法を駆使してスリム化を図ろうとするだろう。

果たして需要は回復するのか

 「体力」や資金繰りなどの面で相対的に余裕があると考えられる上場企業が調査対象のQUICK短観が示すものよりも、中小企業、さらには零細企業・個人事業主が足元で陥っている状況は、一段と厳しいものになっていると推測される。政府はさまざまな施策によって、そうした規模の小さい企業を救おうとしている。だが、事務処理能力の限界もあり、迅速なサポート体制が構築されたとは言い難い状況である。

 また、そうした当局による「輸血」や「ミルク補給」的な政策措置によって、当分の間は企業として存続できるとしても(言い方を変えると、供給サイドの既存秩序の崩壊が当面防がれるとしても)、新型コロナウイルスがもたらした危機が収束した後、需要が以前と同様のレベルまで回復してこないとするなら(筆者は恐らく回復しないだろうと予想している)、規模の小さな企業はビジネスをそのまま続けていくかどうかで、厳しい判断を迫られるだろう。