4月上旬の時点では、イスラエルはむしろ状況が危うい国の1つとみられていた。同月2日にはリッツマン保健相夫妻の新型コロナウイルス感染・隔離が公表された。これより前、3月30日からはネタニヤフ首相が側近の感染判明をうけて自主隔離を開始していた。

 このリッツマン保健相は、連立与党の一角である超正統派政党「ユダヤ教連合」の党首であり、集団礼拝に参加していて感染したのではないかと報じられた。ユダヤ教の超正統派は「礼拝を優先し、政府が呼びかける『不要不急の外出禁止』などの情報を信じない人が多い」ことなどから、彼らの居住区で新型コロナウイルスへの感染が深刻化。イスラエルの商都テルアビブに近い人口約20万人のブネイブラクでは4月2日までに、人口約90万人の最大都市エルサレムとほぼ同じ900人以上が感染したという(4月6日付毎日新聞)。

イスラエルは全土を段階的に封鎖

 政府による規制を無視して集団礼拝を続けるユダヤ教超正統派を問題視したネタニヤフ首相は、4月8~15日のユダヤ教の祝祭「過越(すぎこし)の祭り」に備えて、全土を段階的に封鎖するという、強硬な対応を取った。

 この国の新型コロナウイルス対策の最大の特徴は、1日1万件ペースという大規模なPCR検査である。感染者をあぶり出して隔離し、拡大を防ぐ。韓国さらにはドイツでうまくいった手法と同じである。「ドライブスルー方式」の検査のほかに、電話で事前診断を受け付けた上で必要なら救急隊が自宅を訪れて検査することも実施して、院内感染を防いだ。検査要員が不足すれば大学や研究機関も協力するなど、挙国一致の支援態勢が敷かれたという(4月21日付朝日新聞)。

 このPCR検査に大学や研究機関も協力するというアイデアは日本でも実行が可能ではないかと、京都大学iPS細胞研究所長を務めるノーベル賞受賞者の山中伸弥教授が提言している。

 同教授は5月6日に安倍首相とともにインターネット番組に出演し、「経済を再開していく鍵は、徹底的な検査と、陽性者の隔離」という見解を示した。さらに、iPS細胞研究所の中にはPCR検査ができる機械が30台ほどあると説明。「研究員や技術員が何十人といるが、多くの人が実験せず在宅になっている。こうした大学や研究所の力をうまく利用すれば、PCR検査数は2万を超えて10万くらいいけるのではないか」と述べて注目された。

 上記の出来事をうけて、政府もようやく動き出したようである。新型コロナウイルスのPCR検査を実施する能力が全国の大学にどれくらいあるかについて、文部科学省が調査を始めた(5月13日付朝日新聞)。同省は11日付で約1000の国公私立大学や研究施設などに事務連絡を出し、機器の台数や、1日当たりの最大検査可能数、病原体を取り扱える施設数などを14日までに回答するよう求めたという。

 イスラエルではさらに、外国人の入国禁止や当局による感染者らの行動監視(通常はテロ防止目的で使う技術も行動監視目的に転用したようである)、外出規制の違反者に多額の罰金を科すといった、厳しい措置も実行された。

医療関連物資も周到に到達

 また、医療関連物資の調達活動においては、イスラエルの有名な情報機関である「モサド」や国防省にネタニヤフ首相が命じて作らせた特別チームが活躍し、そうした物資の不足を防いだ。モサドは3月中に検査キット10万回分、医療用マスク1000万枚などを入手。国防省は4月に入って中国や韓国などからマスクや防護服、検査キットなどを次々と輸入したという(5月1日付朝日新聞)。

 中東でも有数の軍事国家であるイスラエルは、持てる力を新型コロナ対策にフル活用したと言えるだろう。その結果、医療の現場においてすら防護服やマスクの不足が深刻化している日本や米国などとは全く異なる状況をつくり出した。

(3)コスタリカ
 中米の小国コスタリカの人口は約499万人(18年時点)だが、新型コロナウイルス感染者数は804人、死亡者数は7人にとどまっている(5月12日時点 米ジョンズ・ホプキンス大学ホームページ)。隣国であるパナマに比べると、少なさが目立っている。

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