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ロイター通信のインタビューを受けたトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

 ロイター通信が4月29日に配信したトランプ米大統領インタビューの内容は、中国に対して現職のアメリカ大統領が抱いている不信感がいかに根強いかをこれ以上ないほど印象付ける、下記の発言を含んでいた。

 「このレース(大統領)選挙で私を敗北させるために、中国はできることは何でもやるだろう(China will do anything they can to have me lose this race.)」

 新型コロナウイルス感染拡大およびそれを阻止するための政策対応から、米国の景気は断続的に悪化している。経済の状況が悪化すれば、再選を目指している現職の大統領にとって強い逆風になる。大統領はこのインタビューでさまざまな選択肢を検討していることを明らかにしつつ、「私には多くのことができる」と述べた。

 米国における新型コロナウイルスへの感染者数はすでに120万人を超えており、世界で最も多い。米メディアによると、このウイルスへの感染による死亡者数は、ベトナム戦争における米国人の死亡者数(5万8220人)を、4月28日時点で上回った。

不用意な発言を繰り返すトランプ大統領

 そうしたことも念頭にあるのだろう。トランプ大統領は5月6日、新型コロナウイルスは「我々が経験した中で最悪の攻撃だ。パールハーバー(1941年の旧日本海軍による真珠湾攻撃)や世界貿易センタービル(2001年の米同時多発テロ事件)よりひどい」としつつ、「これは決して起こるべきではなかった。発生源の中国で止めることができたはずだ」と述べて、中国責任論を展開した。

 大統領のこのところの言動からは焦りが隠せない。「消毒薬発言」のような不用意なコメントも出てきている。

 そして、この問題では大統領の忠実な部下であるポンペオ国務長官が、大統領の上記の発言よりも前から中国批判を繰り返しており、米政府は現時点でウイルスとの闘いを優先しているが「いずれ中国の責任を問う時が来る」と警告している。

 ポンペオ長官は、中国・武漢にある研究所がウイルス発生源ではないかという見方をとっており、「武漢(Wuhan)ウイルス」という呼び方に固執している(ちなみに日本では、麻生太郎副総理・財務相や山本朋広副防衛相がそう呼んだ場面があったが、河野太郎防衛相は「新型コロナウイルス」「COVID-19」という表現でよいとしている)。

 3月25日に初めてテレビ会議形式で開催された主要7カ国(G7)外相会合は、共同声明を発表できなかった。報道によると、新型コロナウイルスを「武漢ウイルス」と呼ぶべきだとするポンペオ長官の主張に対し、「国際協調が求められる時に不必要な争いの元になる」として米国以外の国々がこの呼称に反対したためだという。

 ポンペオ長官は4月22日には、世界保健機関(WHO)への迅速な報告などを中国が怠ったと非難した。中国国内の全省に感染が広がるまで1カ月にわたり中国が「人から人への感染」を報告しなかったとし、その上で、WHOへの報告後も「全情報を共有せず、新型コロナ感染症がいかに危険であるかを隠ぺいした」と主張した。

 1週間後の29日には、武漢の研究所施設への調査目的の立ち入りを認めるよう、中国に対してあらためて要求。「武漢から来たウイルスのために経済は衰退し、多くの命が失われた」と述べて、中国政府の感染拡大に関する責任論を展開した。

 さらに5月3日、ポンペオ長官はABCテレビのニュース番組で、このウイルスが「武漢の研究所から発生したことを示す多くの証拠がある」「確証を得るため情報機関が検証を続けている」と述べた。トランプ大統領がFOXニュースで同日述べたところによると、「何が起きたのか、非常に強力な報告書が出るだろう。決定的なものだ」「彼らは過ちを犯したが、それを隠そうとした。火事を消そうとしたが、できなかったようなものだ」という。