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世論に押される形で現金給付が決まったが……(写真:PIXTA)

 政府が4月7日に閣議決定した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」には、収入が減少した世帯への30万円給付が盛り込まれていた。だが、1週間後の14日に二階俊博自民党幹事長が一律10万円の現金給付を要請すると突然述べたことをきっかけに、事態は急展開することになった。

 翌15日に公明党の山口那津男代表が安倍晋三首相に対し、所得制限なしの一律10万円給付を2020年度補正予算案の組み替えによって早期に実施するよう、連立政権離脱さえちらつかせながら強く要請した。首相はこれに屈し、対象を絞った上での30万円給付を政府・与党内で主導していた麻生太郎副総理・財務相や岸田文雄自民党政調会長も、この方針変更に従った。 

 こうした路線変更は、国内政治の観点からすれば「政争」の色合いが濃い。自民党内での二階幹事長と岸田政調会長のあつれき、連立政権内での存在感低下・支持母体の不満を危惧した公明党、官邸内での人的な政策決定プロセスの変化、そして自民党総裁任期満了が見えてきた安倍首相の求心力低下といった、さまざまなことが言われている。だが、ここではそれらはさておき、現金給付一律10万円には政策としてどのような意味合いがあるのかを、筆者なりに考察してみたい。

 収入が減少した世帯に対象を絞った30万円給付から、1人一律10万円給付への路線変更。前者の予算面での裏付けとして、財務省は20年度の補正予算案に4兆206億円を計上する方針だった。だが、組み替え後の補正予算案ではその3倍を超える12兆8803億円へと金額が膨れ上がった。

 4月27日時点の住民基本台帳の全記載者(12年7月からは外国人住民も対象に加わっている)に、国籍を問わず一律10万円が給付されると、総務省は発表した。人口規模の小さな市区町村であれば5月にも給付開始が可能と総務省は説明しているが、多くの自治体では6月にずれ込むのでないかという。日本のスタンダードでは迅速な対応ということになるのだろうが、米欧の類似の事例に比べると、スピード感があるとは到底言えない。

追加給付も視野?

 総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(19年1月1日現在)を見ると、日本人住民が約1億2478万人、外国人住民約267万人、総計で約1億2744万人である。これらの数字から今年4月27日までに大きな変動がなかったとみれば、一律10万円給付に必要な国の歳出は単純計算で約12.7兆円になり、これに事務経費が加わってくる。実際、国の関連支出は上記の通り、約12.9兆円になった。

 少し分からないのは、安倍首相が4月17日の記者会見で「現金給付の総額は14兆円を上回る規模になる」と述べていたことである。今後の展開は現時点では不明だが、上記の方針変更で損をする形になる世帯(収入が減少している単身世帯・夫婦2人のみの世帯・母と子のみの世帯など)に対する追加給付も視野に入れているのかもしれない。

 ちなみに山口公明党代表は4月20日、政府与党政策懇談会後の取材で、減収世帯への30万円給付を追加で実施する必要性を問われ、「緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大した影響を見ながら、何が必要か検討しなければならない」と述べていた(共同通信)。