ECBは3月に経済見通しの数字を一応提示したが、記者会見したラガルド総裁は、暫定的な数字だということを強調していた。日銀も、仮に政策委員見通しの数字を公表するとしても、暫定的な性格の数字しか出せず、ばらつきは相当大きくなるだろう。

世界で進む「日銀化」

 市場では筆者を含めて、日銀がたどってきた道筋の上に欧米やオセアニアの中央銀行が乗ってきており、いわば「日銀化」してきたという見方が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大による実体経済・信用状況悪化への対応として、FRBなど先進国の中央銀行はフルパワーの金融緩和を打ち出しており、「弾切れ」に陥りつつある。

 その先にあるとみられるのは、日銀流の粘り強い金融緩和、緩和効果がいずれ出てくるはずだと唱えながら(自らを信じ込ませながら)の、「持久戦」的な金融緩和である。

 最後に、いくつかの中央銀行が超低金利(マイナス金利を含む)に付加している「フォワードガイダンス」(将来の金融政策運営についてのコミットメント)の内容を確認した上で、先行きについて少し考えてみたい。

◆米FRB ~ フェデラルファンド(FF)レート誘導水準である0~0.25%に付加
 「経済が最近の出来事を乗り切り、最大雇用と物価安定というゴール達成に向けた道筋にあると確信するまで(until it is confident that the economy has weathered recent events and is on track to achieve its maximum employment and price stability goals)」

◆ECB ~ 政策金利(レポレート0.00%・限界貸出金利0.25%・預金ファシリティー金利マイナス0.50%)に付加し、これらの水準またはさらに低い水準にとどまるとコミット

 「インフレ見通しが予測対象期間内に2%に十分近いものの2%未満の水準にしっかり収れんし、そしてそうした収れんが基調的な物価のダイナミクスに一貫して反映されるまで(until it has seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within its projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics)」

◆オーストラリア準備銀行(RBA) ~ キャッシュレートのターゲットである0.25%に付加し、下記の条件が満たされるまで利上げはしないとコミット
「完全雇用に向けた進捗があり、インフレ率が目標のバンドである2~3%に持続的に収まるという確信を理事会が得るまで(until progress is being made towards full employment and it is confident that inflation will be sustainably within the 2~3 per cent target band)」

◆日銀 ~ 長短政策金利に付加しているフォワードガイダンスは、物価のモメンタムを引き合いに出しつつ、現行の金利水準またはさらに低い水準にとどまるとコミット
「『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間」

「コロナ後」も金利正常化は難しい

 フォワードガイダンスによる縛り方には国による多少の違いはあるものの、物価目標を達成する必要性から利上げのハードルが相当高く設定されている点は共通している。

 新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の事態が終わりを迎えても、先進各国の中央銀行が「だからすぐ利上げできる」というわけではあるまい。各国中央銀行のバランスシート規模についても、大幅に縮小させて「正常化」しようとするのは、至難の業だろう。

 一度やってしまったことはなかなか取り返しがつかない。「市場」という扱いが難しいプレーヤーが関わっているだけに、なおさらである。

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