日銀の長期国債買い入れは、年間保有残高の増加額について80兆円をめどとしているが、実際には20兆円を下回るところまでペースが落ちており、80兆円という数字は事実上無視されている〈図1〉。この状況は、逆に言えば、今度は買い入れを増額する余地が生じているということでもある。

図1 日銀が買い入れて保有している長期国債残高(月末)の前年同月差
図1 日銀が買い入れて保有している長期国債残高(月末)の前年同月差
(出所)日銀資料より筆者作成

 おそらく大型連休入りの前になると思われるが、国会で20年度補正予算が可決成立するのを待ってから定例の会合で日銀が動くことも可能ではあるが、ポリシーミックスをより強くアピールしたい場合には、政府による経済対策の決定と近いタイミングで動くという選択肢がある。

 なお、緊急事態宣言が出されたり、東京がロックダウン(都市封鎖)状態になったりしている場合には、初のオンラインでの会合開催になることも考えられる。

◇長期国債買い入れ増額の追加緩和は可能か?→可能ではないが、要は「見せ方の問題」
 本質的には追加緩和ではなくても、日銀がそうした方向のオペレーションを取るつもりだと市場にアピールすることは、十分可能である。

 すでに日銀は前例を作っている。3月16日の会合で決定された「新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化について」は、すでに述べた通り、大きな柱の1つとして「ETF・J-REITの積極的な買い入れ」を掲げた。これは、年間約6兆円・年間約900億円という「原則的な買い入れ方針」は全く変えず、当面は買い入れをペースアップする方向で柔軟運用をするということを強調しただけの話であり、追加緩和と言えるものではない。

 とはいえ、カードが限られる中で、日銀が「見せ方の工夫」によって乗り切りを図ろうとすること自体は、筆者としては十分理解できる。マイナス金利深掘りのような日本経済にとって有害な措置を無理に講じるよりも、その方がはるかにましである。

長期金利上昇の抑制行動をアピール?

 ロイター通信は3月30日、20年度第1次補正予算案や財政投融資計画追加に合わせて、財務省は20年度のカレンダーベースの国債市中発行額を増額する調整に入ったと報じた。増額は16兆円という大きな規模になる見通しで、7月から増発する。長期金利上昇(および円高進行)を抑制する政策行動を日銀がアピールできる舞台が整いつつあるように、筆者には見える。

 なお、黒田総裁は19年6月20日の記者会見で、「仮に、日本銀行として現在のイールドカーブ・コントロール(長期金利操作)を維持する必要性があって、その間に国債の増発によって長期金利が上がるということが防止されるという意味では、結果的に財政政策と金融政策の協調というポリシーミックスになり得るということです」と述べていた。意味深長である。

◇4月展望レポートの経済・物価見通しはどうなる? → 出せても暫定的な数字のみ
 FRBは、四半期ごとの経済および金利見通しを3月は提示しなかった。新型コロナウイルス感染拡大の下、情勢がきわめて流動的であることを考慮したのだろう。

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