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参院決算委員会でマスクを外す黒田東彦日銀総裁(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は3月18~19日に開催予定だった3月の金融政策決定会合を16日に前倒しで開催し、新型コロナウイルス対応の追加緩和を決定した。15日の日曜日に米連邦準備理事会(FRB)が緊急で大幅な金融緩和に動いた直後の出来事である。余談だが、この日に休暇を取っていた筆者は、早朝から午後まで在宅勤務をすることになった。

 日銀による対外公表文のタイトルは「新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化について」。英文では“Enhancement of Monetary Easing in Light of the Impact of the Outbreak of the Novel Coronavirus(COVID-19)”である。英文のタイトルは、インターネット上などでキーワードを拾うテキストマイニングから売買注文を自動的に出すファンドなどの動きを意識して組み立てられたと推測される。要するに、円高や株安を招かないようにする配慮である。公表文の主な内容を整理すると、以下のようになる。

「下振れリスク高まる」

◇1月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)のシナリオを撤回
 日銀による景気の総括判断は、従来は「所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している」になっていた。それを今回、「新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響によりこのところ弱い動きとなっている」に下方修正した。

 さらに、景気の先行きの判断は「当面、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響から弱い動きが続くとみられる」という、厳しいものになった。1月の展望レポートで示したシナリオを撤回し、状況急変後のシナリオを日銀は別紙で示した。

 加えて、リスク要因の部分では、原油価格の急落にも触れつつ、「こうした下振れリスクは高まっているとみられ、内外金融市場の動向やわが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある」とした。日銀が重視している「物価上昇に向けたモメンタム」が途切れてしまうリスクがある。

◇「一層潤沢な資金供給の実施」
 「積極的な国債買い入れなど」のほか、「企業金融支援のための措置」「CP(コマーシャルペーパー)・社債などの買い入れの増額」という手段も活用しつつ、「当面、円資金の一層潤沢な供給に努める」とした。金融市場でニーズが強まっている米ドル資金については、FRBなどと協調して発表した、米ドル資金供給オペで対応することになった。