
新型コロナウイルス感染拡大による急激な景気悪化に対応し、2020年度補正予算早期編成・赤字国債増発を前提にした緊急経済対策が、政府により4月の早い段階で取りまとめられる見通しになっている。
19年12月に決定した経済対策(「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」:事業規模26兆円程度、財政支出13.2兆円程度)と合わせると、政府系金融機関による融資枠なども含めた事業規模は、日本の名目国内総生産(GDP)の1割に相当する56兆円超となる方向。G7やG20における政策協調も意識していると考えられる。
さらに、国民に対する政治的なアピールで(善意に解釈すればアナウンスメント効果を意識し)、これら2つの対策を合わせた事業規模は、これまでの対策で最も大きかった「経済危機対策」(「リーマン・ショック」後の09年4月10日に決定)の56.8兆円程度を上回りそうだ。また、財政支出は15兆円を超える見通しである(共同通信)。
今回の経済対策に関連して議論の的になっているのは、家計への金銭面からの直接支援を、①どのような形態で、②どのような対象に、③いつ実施するかという点である。
まず、①について。大まかに整理すると、「消費減税」「現金給付」「商品券配布」という3つのアイデアが政府・与党内に出ている。
消費減税の問題点
19年10月に標準税率が10%に引き上げられたばかりの消費税に関しては、野党の一部に加えて、自民党若手議員の中にも、税率を引き下げて個人消費を刺激すべきだという主張がある。金融市場でも、「消費減税」実現の可能性はどのくらいあるのかが、一時注目された。この問題の経緯を時系列で整理すると、以下のようになる。
◇安倍晋三首相は3月13日、甘利明自民党税調会長と会談。甘利氏は記者団に「税や予算、いろいろな選択肢を話し合った」と述べた上で、消費税減税の話題が出たかどうかは明言を避けた。一方、世耕弘成自民党参院幹事長は記者団に、キャッシュレス決済のポイント還元制度の対象拡大が「非常に有効に機能する可能性がある」と発言。所得税や消費税の減税も「選択肢の一つだ」とした(共同通信)。
◇安倍首相は翌14日の記者会見で、「機動的に必要かつ十分な経済財政政策を間髪を入れず講じる」「世界経済のさらなる落ち込みも懸念される」「一気呵成(かせい)にこれまでにない発想で思い切った措置を講じる。思い切った大胆なメッセージ性の強い対策をしていかなければならない」と述べた。自民党若手議員が提唱する消費税減税については「提言も踏まえながら、さまざまな可能性を想定する」として否定しなかった。この記者会見のテレビ中継を見ていた筆者は、「これまでにない発想」という部分が気になった。
◇安倍首相は16日の参院予算委員会で、消費税率引き下げを含む大規模な経済対策の必要性に関する質問に対し、「今までの発想にとらわれない対応を検討」「メッセージ性のある対策、ある意味覚悟を持って講じる」と答弁した。山田太郎委員(自民)は、消費税率の5%への引き下げを含めた大規模な経済対策の必要性について首相に質問。昨年の消費増税前に首相が「リーマン・ショック」級の経済ショックがあれば消費増税を見送ると繰り返していたことを引き合いに質問した。(ロイター通信)
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