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 予定通りの東京五輪・パラリンピック開催の可否にも影響してくるため、何月開催のイベントまでそうした動きが広がるかを筆者は注視しているのだが、筆者が最初に注目したのは、イタリアの高級ファッションブランドであるプラダが、5月21日に日本で予定していたファッションショーの延期を、2月中旬の時点で発表したことだった。

 その後、ロシア政府は3月10日、6月3~6日にサンクトペテルブルクでの開催が予定されていた国際経済フォーラムの中止を発表。3月11日には米エンターテインメントソフトウエア協会が、6月9~11日にロサンゼルスで開催予定だったゲーム見本市「E3」の中止を発表した。3月12日には、カザフスタンの首都ヌルスルタンで6月8~11日の開催が予定されていた世界貿易機関(WTO)閣僚会議が中止になることが明らかになった。新型コロナウイルスを巡る懸念が理由である。

 さらに、英国で7月20~24日に開催が予定されていた世界的な航空機見本市「ファンボロー航空ショー」の中止が、主催者から3月20日に発表された。新型コロナウイルス感染拡大を主因とする国際イベントの延期や中止の動きは、もはや7月下旬にまで及んできている。東京五輪の開幕日は7月24日。それよりもある程度前のタイミングで予定通り開催するかどうか決める必要があることを考えると、状況は極めて切迫していると言わざるを得ない。は3月22日の緊急理事会で、東京五輪について延期も含めた対策を検討して4週間以内に結論を出すとの声明を発表した。

 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之理事はJNNニュースの取材に対し、延期を判断する時期について、「アスリートのことを考えると5月では遅いのではないか」と発言。3月末に開かれる組織委員会の理事会では延期について「議題に上ると思う」との見通しを示した(ロイター)。

 高橋理事は米ウォールストリート・ジャーナルの取材に対し、「ウイルスは世界中にまん延している。選手が来られなければ、五輪は成立しない。2年の延期が現実的だ」と発言。3月11日には朝日新聞に対し、東京五輪・パラリンピックについては1~2年の延期案を考えるべきだとし、「延期を視野に入れるなら、今から準備しないと間に合わなくなる」と述べた。そして、トランプ大統領が12日、ホワイトハウスで東京五輪について記者団に、「1年間延期すればよいかもしれない」「無観客の競技場で実施するよりはよい」と発言した。

 日本の人々の間でも、このままでは東京五輪・パラリンピックの予定通りの開催は難しそうだという見方が、日々強まっているようである。

 NHKが3月6~8日に実施した世論調査では、東京で予定通り開催できるかどうかについての回答は、「開催できると思う」(40%)、「開催できないと思う」(45%)という結果で、後者の方がわずかに多かった。

 しかしその後、共同通信が14~16日に実施した世論調査では、「開催できると思う」(24.5%)に対し、「開催できないと思う」(69.9%)で、かなりの差がついた。

 朝日新聞が14~15日に実施した世論調査では、どのようにするのがよいと思うかを尋ねていた。結果は、「予定通り開催する」(23%)、「延期する」(63%)、「中止する」(9%)で、延期派が6割を超えた。

 東京新聞が3月13日朝刊の1面で報じた、東京五輪開催について判断するタイムリミットは5月の大型連休ごろだという匿名の政府高官による率直な発言に、筆者は注目している。この高官は、巨額の損失を伴う東京五輪の中止を避けるためにも「トランプ氏が自ら延期と言ってくれるのは心強い」と指摘。選手が来日できなくなる事態に言及し、「5月の大型連休ごろまで今のような状況が続けば、開催は難しい。スポンサーとの調整がつけば延期もあり得る」と述べたという。

本当は「抜本的な問題」の根治が必要

 安倍首相は3月16日夜のG7(主要7カ国)のテレビ電話による首脳会議で、東京五輪は「完全な形で実施したい」と述べた。政界を中心に、五輪の中止や無観客開催ではなく、1~2年の延期を模索する布石だと受け止められている。

 さまざまな波紋を呼んでいる新型コロナウイルスの感染拡大という「新しいタイプの危機」がいつ、どのような形で終息するかは、まだ全く見えてきていない。

 ところで筆者は引き続き、8年ぶりに再発した腰痛に悩まされており、病院でブロック注射をしてもらいながら「長期戦」覚悟でじっくり治そうとしている最中である。痛み止めの薬や湿布は、結局のところ、対症療法でしかない。各国が発動している大胆な財政・金融政策も、そうした「痛み止め」の範ちゅうの話にすぎず、迅速で抜本的にこの問題の「根治」をもたらすものではない。金融市場はそれを見透かして動いているように見える。