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何でもかんでも押しつけられて、もう無理!(写真:PIXTA)

 「第1子に月1万円、第2子に月3万円、第3子に月6万円」という、支給額が子どもの数に応じて増えていく形へと児童手当を拡充してはどうかという少子化対策のアイデアが政府内で急浮上していると、毎日新聞が2月12日に報じた。旗振り役は安倍首相の側近として知られている衛藤晟一・少子化対策担当相である。

 児童の年齢が3歳未満の場合に一律で月1万5000円、3歳以上小学校修了前の場合に月1万円(ただし第3子以降は月1万5000円)、中学生の場合に一律1万円を支給している現在の児童手当(手当を受け取る人の所得が定められた所得制限限度額以上の場合には、児童1人につき月5000円)は、子どもを持ち、さらには増やすインセンティブとしては明らかに弱い。しかも、予備校・塾など学校外でかかる教育費負担の大きさを考えると、この程度の金額では焼け石に水ではないかという声も出てきやすいだろう。

 家族手当の加算を含めた手厚い施策によって合計特殊出生率の引き上げに成功したフランスの事例も念頭に、衛藤少子化対策担当相が上記の構想を安倍首相に打診したところ、3~5兆円が必要になるという財源の面から、首相は「うーん」とうなったまま沈黙した。それでも、衛藤氏は3月末までに策定する政府の方針「第4次少子化社会対策大綱」で、現金給付の拡充にも一定の道筋をつけたい構えだという。

出生数は現実が予測を2年先行

 昨年1年間に日本国内で生まれた子どもの数は86万4000人で、1899年(明治32年)の統計開始以降で初めて、90万人を下回った<図1>。国立社会保障・人口問題研究所による2017年の人口推計では90万人割れは2021年となっていた。現実が2年先行した形である。

■図1:日本の出生数(暦年)
注:1944~46年はデータなし
(出所)厚生労働省

 第1次ベビーブーム期の出生数は約270万人、第2次ベビーブーム期では約210万人だったことからすると、隔世の感がある。2016年の100万人割れ、昨年の90万人割れなど、節目とみられる数字を割り込む際に、世の中ではにわかに危機感が広がり、政策対応を求める声が強まりやすいように思う。

 けれども、人口動態重視のエコノミストとして長年にわたって筆者が主張してきたことだが、人口減・少子高齢化という人口面の危機というのは、じわじわ進み続ける持続的で慢性的な性質のものであり、クライマックスらしいクライマックスがなかなか起こりにくい。

 そうした中であっても、政策担当者は長期的な視野から、先見的・先制的に少子化対策を展開すべきだった。1989年の合計特殊出生率が、丙午(ひのえうま)だった1966年さえも下回った「1.57ショック」の後に平成バブルが崩壊してしまい、金融機関の不良債権問題への対応に政府が10年以上にわたって傾注せざるを得なかったという「巡り合わせの悪さ」的な面はあったのだが、その点を勘案しても、日本の人口対策は後手に回り過ぎである。