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 日銀の山田泰弘大阪支店長は1月28日、 大阪で開催された内外情勢調査会で講演した際、「(新型肺炎の)感染がどの程度の期間で収束するかが関西の景況感を短期的には大きく左右し得る」「春節の期間に中国からの観光客が減少するとなれば、それなりに影響が出る」「インバウンドだけでなく、サプライチェーンなど生産への影響もあるので、注視する必要がある」といった警戒的なコメントを発した。もっとも、関西経済の先行きについて山田支店長は、「悲観することはない」と結論付けた。

 新型肺炎は、新たに浮上した景気下振れリスクであり、経済の先行きシナリオの不確実性を高める要因だ。その影響の拡大度合いや、リスク認識を持たなければならない時間の長さを、中央銀行としても注視する必要がある。

 とはいえ多くの中央銀行は、この「新型肺炎」のリスクだけを根拠にして、景気・物価に関する中心的シナリオを今すぐ大きく変更する必要が生じているとは現時点では判断しないだろう。

 したがって、事態の推移を見極めた上でなければ最終的な結論は出せないものの、金融政策の先行きへの影響は現時点では限られるというのが、多くの中央銀行が導き出す結論になると考えられる。

 1月28日にそうした判断をまず下したのがハンガリー国立銀行(中央銀行)である。インフレ目標(中期的にプラス3%)の達成を目指しつつマイナス金利政策を実行している同行は、主要政策金利(中央銀行ベースレート)を0.9%に、翌日物預金金利をマイナス0.05%に据え置くとともに、声明文に「コロナウイルスの出現は不確実性を高めた。ウイルスの感染拡大はグローバルな経済成長見通しの再度の悪化や、新興国市場におけるリスク回避姿勢の強まりにつながり得る」と記述した。

 その後、1月28~29日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場のコンセンサス通り、現状維持を決定した(ただし、超過準備付利金利は、短期金利誘導にまつわるテクニカルな観点から0.05%ポイント引き上げ)。会合後に公表された声明文には19年12月と同じく、金融政策決定に当たって考慮に入れる要素の1つとして、「金融および国際情勢の展開(readings on financial and international developments)」が明記された。

長期的な影響はまだ判断できず

 新型肺炎は特記されなかったものの、この問題も含まれていることを、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は記者会見で認めた。さらに、新型肺炎の感染拡大は非常に深刻な問題であり、世界的な混乱を引き起こす可能性があるものの、「マクロ経済への影響は現時点では不明確」「感染拡大による影響を注意深く監視する」といった発言も、パウエル議長からはあった。

 新型肺炎の感染拡大という新たなリスクファクターが出てきたものの、FRBは年を通じて金融政策を据え置くだろうという予想を変更する必要はどうやら今のところなさそうだと、筆者はみている。