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(1)世界経済における中国のプレゼンスはSARSが流行した03年当時よりもはるかに大きくなっていること

 IMF(国際通貨基金)のデータベースをもとに計算すると、03年当時は中国の経済規模が世界全体に占める割合は4.3%だった。だが、18年には15.7%である(購買力平価で調整したベースでは03年が8.7%、18年が18.7%)。

 その中国の19年の実質GDP(国内総⽣産)は前年⽐プラス6.1%で、⽶中貿易戦争などにより下押しされたため、29年ぶりの低い伸びにとどまった。中国の19年通年の経済成⻑⽬標は「プラス6.0〜6.5%」だったが、これは減税などの財政出動によってなんとか達成できた。もっとも、四半期ベースで見ると、19年は7~9月期と10~12 ⽉期が前年同期⽐プラス6.0%にとどまっており、年前半よりもスローダウンしている<図1>。そこを新型肺炎が直撃した。

図1:中国の実質GDP成長率
(出所)中国国家統計局

中国の経済成長率を下押し

 2020年の成長目標は3月の全人代(全国人民代表大会)で示される予定だが(全人代が延期される可能性もささやかれている)、当局者の発言内容をもとに、目標の数字は「プラス6.0%程度」に引き下げられるだろうというのが、新型肺炎の問題が出てくる以前は、市場のコンセンサスになっていた。だが、新型肺炎によって中国の経済活動は需要と供給の両面から強く下押しされており、今年1~3月期の経済成長率はかなり悪くなるはずである。前年同期比プラス6.0%を大幅に下回る可能性が高い。

 この問題について、政府系シンクタンクである中国社会科学院のエコノミスト、張明氏の見解が、1月29日発行の経済誌「財経」に掲載された。中国経済は03年当時よりもサービス化が進んでおり、新型肺炎の感染拡大による個人消費への打撃は重いと、張氏は指摘。今回の感染拡大によって実質GDPは約1%ポイント押し下げられる可能性があり、今年1~3月期は前年同期比プラス5.0%になるかもしれず、プラス5.0%を下回る可能性も排除できないとした。

 これは、感染者数が2月初旬から中旬にピークをつけて3月末までに収束するという前提の上での試算である。ただし、中国当局は景気刺激を財政・金融の両面で強化するだろうと張氏は予想しており、4~6月期からは成長率が持ち直し、20年通年では前年比プラス5.7%になると見込んだ。目標が「プラス6.0%程度」に設定されるなら、ぎりぎり許容範囲と言えそうな数字である。

 もっとも2⽉に⼊ってからは、中国当局が「プラス6.0%程度」よりも低い数字への⽬標引き下げを検討中との報道が複数出ている。

(2)「カネあまり」を原動力に高値を模索してきた米国株に相応の下落余地があること

 米主要株価指数の1つであるS&P500種のPER(株価収益率)が18倍を大きく超えたり、景気サイクルに先行するとされるダウ輸送株20種平均がここ2年ほど推移してきたレンジの上限を試す形で11000を超え続けたりと、米国の主要株価指数には1月中旬の時点で、「買われ過ぎ感」が出ていた。

突然現れた「リスクオフ」材料

 そうしたところに、どこまで影響が大きくなるかが一朝一夕にはわからない不気味な「リスクオフ」材料が出てきたわけである。冒頭で述べたように急落した米国株はほどなく急反発したが、新型肺炎を材料にした⽶国株の不安定化局⾯はまだ終わっておらず、下落幅は今後それなりに大きくなる可能性がある。そしてそのことにより、グローバル経済の早期安定化・底入れ・回復への期待感は、いったん水を差されるだろう。株価下落には、企業の投資行動や個人の消費支出にブレーキをかける面がある。

 では、米国をはじめとする(中国以外の)各国の中央銀行にとって、「新型肺炎」という新たなリスク要因は現在、どのような位置づけになっているのだろうか。