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マスク姿の観光客らが目立つ

 中国湖北省・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、世界経済を揺さぶっている。米株式市場ではダウ工業株30種平均が1月27日にかけて5営業日続落。日本では日経平均株価が1月30日に終値で前日比400円を超す急落となり、2万3000円を下回った。

 もっとも、その後はグローバルな「カネあまり」を足場にした買い戻しが強まる展開で、中国当局による景気刺激策検討やワクチン開発の前進に関する報道を手掛かりに株価は急反発。ダウ工業株30種平均やナスダック総合株価指数が史上最⾼値を更新するなど、内外の株価は振れがかなり大きくなっている。

 この新型肺炎による中国全⼟での死亡者数は、2⽉10⽇時点で900人を超え、感染者数は4万⼈を突破した。中国本土以外でも、日本、タイ、シンガポール、香港、韓国、オーストラリア、ドイツ、米国、台湾などで感染者が見つかっており、事態はじわじわ悪化している。

SARSの死者は774人

 今回の新型肺炎と対比されることが多いのが、2002年11月から03年7月にかけて中国南部を中心に感染が拡大して世界経済に悪影響を及ぼしたSARS(重症急性呼吸器症候群)である。SARSの場合、世界保健機関(WHO)が終息宣言を出した03年7月5日時点で、世界全体の患者数は8498人、死亡者数は774人にのぼった。新型コロナウィルスはこれを大きく超えたことになる。

 では、専門家はどうみているのだろうか。

 北海道大学の西浦博教授は2月4日に都内で記者会見し、中国の感染者は10万人にのぼるという推計結果を明らかにした。感染者全体の死亡率は0.3~0.6%と推計した。SARSの約10%と比べると大幅に低いものの、季節性インフルエンザの10倍以上になる。

 一方、中国の保健当局の直近データから新型肺炎の致死率を計算すると、中国全体では2.1%だが、武漢では4.9%で、武漢以外の中国は0.8%にとどまっている。この大きな差についてWHOで感染症対策を指揮した経験がある東北大学大学院の押谷仁教授は、「武漢では医療機関が混乱しているため軽症の患者がカウントされていなかったり、重症患者への治療が十分でなかったりして、致死率が高くなっている可能性がある」などとしている(NHK)。

 武漢は市外との交通が当局の措置で強制的に遮断され、封鎖状態にある。上海などの大都市では感染を警戒して人々が自宅にこもって生活を続けるケースが多いという。上海ディズニーランドなど中国の主要観光地は営業停止中。海外への団体旅行は当局によって禁止された。日米欧から中国への航空便が運航停止あるいは減便になるなど、人の行き来が細っており、グローバル化が進んだ各国の経済に悪影響を及ぼしている。

 新型肺炎がグローバル経済やマーケットにもたらす悪影響はあくまで一時的なものだとみなして今回の問題をあまり重視しない向きも、市場では見受けられる。だが、ここはやはり、相応に警戒して見ていくのが順当だろう。以下の2点に留意する必要があると、筆者は1月27日時点から主張し続けている。