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 また、欧州大陸のイタリアでは、出生率の低下が経済の先行きに警鐘を鳴らしている(1月18・19日付 英フィナンシャルタイムズ)。1920年代には平均して2.5だったイタリアの出生率は1.32まで低下した。2019年の出生者数は44万人にとどまった。イタリアが統一された1861年以降で最も小さい数字であり、死亡者数の半分未満である。

16万人が国を離れたイタリア

 しかも、イタリアの場合には国外への移住者数が増えており、事態を一層悪化させている。2019年は若者を中心に16万人がイタリアを離れた(1980年代初め以来の高水準)。一時は連立政権を構成していたもののすでに下野した反移民を掲げる右派政党の同盟は、イタリア人の子供を増やす狙いから保守的なキリスト教家族の価値に焦点を当てたというが、金銭およびインフラ面での政策的なしっかりしたサポートが伴わないようだと、少子化対策としては実効性に欠けると言わざるを得ない。 

 なお、この記事には「相関は因果関係ではないが、日本とイタリアは両方とも公的債務の水準が非常に高く、出生率の水準が非常に低い」というイタリアの知識人のコメントも掲載されていた。

 人口動態重視のエコノミストである筆者には、欧州における人口関連の事態の推移や政策展開は実に興味深い。日本から若者が大量に流出する日は来るのだろうか。

 最後に、気候変動についてスイス・バーゼルにある国際決済銀行(BIS)が興味深い報告書を公表したので、その関連でコメントしておきたい。

世界の中銀を襲う「グリーンスワン」

 BISは1月20日、「グリーンスワン 気候変動の時代におけるセントラルバンキングと金融安定」と題した報告書を公表した。気候変動が中央銀行・金融規制監督当局にもたらしている新たな難題は「グリーンスワンリスク(“green swan” risks)」とでも呼ぶべきものを含んでおり、潜在的に金融面で極度に破壊的な(potentially extremely financially disruptive)イベントが次のシステミックな(金融システム全体に影響が及ぶような)金融危機の原因になり得ると、この報告書は強い警鐘を鳴らした。

 気候変動がもたらす経済的悪影響についての警鐘は、1月17日の米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたグレッグ・イップ氏(かつてFRB担当記者として市場の注目を集めたことがある人物)のコラムでも展開されていた。

 ちなみに、このコラムは冒頭で、予想されるオーストラリア準備銀行(RBA)の追加利下げと同国で発生している大規模森林火災の関連について言及していたが、これは筆者も取り上げた話である(当コラム1月28日配信「気候変動でオランダ最高裁が「驚くべき判決」 オーストラリアは山火事で追加利下げ?」ご参照)。

 イップ氏は上記のコラムで、気候変動はもはやテールリスクの範疇(はんちゅう)を超え始めており、経済動向に影響を与えるようになってきたとするカプラン・ダラス連銀総裁の発言を引用。「今後30年における気候危機は過去数十年の金融危機と似通ったものになるかもしれない」と指摘した。

 「潜在的にかなり破壊的で(potentially quite destructive)、総じて予測が不可能で(largely unpredictable)、そして、根底にある強力な原因ゆえに避けられない(given the powerful underlying causes, inevitable)」という。金融危機が避けられないことかどうかについては異論もあろうが、なるほどと思わせる整理である。