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 「『希望出生率1.8』の実現を目指し、深刻さを増す少子化の問題に真正面から立ち向かってまいります」と安倍首相は述べたものの、「一億総活躍社会の実現こそが、まさに少子高齢化を克服する鍵であります」と述べた。

 安倍首相が外国人材受け入れへのさらなる積極姿勢を見せることはなかった。人口減・少子高齢化問題への日本政府の対応は、引き続き後手に回っている感が強い。

 ここで、話はやや飛んでしまうが、上記で取り上げた日本も直面している重要な2つの課題、気候変動対応と人口問題について、欧州を中心に最近見られている動きを取り上げておきたい。エコノミストとして筆者が最近、強い関心を抱いた2つの点である。

 まず、欧州における人口問題に絡む直近の動きである。移民を積極的に受け入れてきた独メルケル政権の人口政策は、移民を受け入れ過ぎることへの不満が国内で高まって与党の支持率低下につながったものの、人口増加によって内需の底堅さを実現するという経済的成果は得ているように見える。

移民の増減が左右する欧州経済

 独連邦統計局が1月15日に発表した19年の実質GDP(国内総生産)速報値は前年比プラス0.6%になった。10年連続のプラス成長だが、18年の同プラス1.5%から伸びは大幅に鈍化し、13年(同プラス0.4%)以来の低成長にとどまった。

 「輸出立国」の色彩が濃いドイツのメインエンジンである輸出は前年比プラス0.9%に鈍化。輸入は同プラス1.9%で、GDP前年比への外需の寄与度は2年連続でマイナス0.4%ポイントになった。ところが、個人消費(家計最終消費支出)は同プラス1.6%に加速した(18年は同プラス1.3%)。これに加えて政府最終消費支出と建設投資も伸びた結果、マイナス成長には陥らなかった。

 1月17日には独連邦統計局から19年末時点の人口(居住者数)が過去最高の約8320万人(前年比+20万人)になったことが発表された。出生者数は77~79万人、死亡者数は92~94万人との見積もりで、13~17万人の自然減なのだが、これを移民の増加が埋め合わせた上でお釣りがきて、ネットで増加になった。外国からの人口流入が外国への流出を上回る流入超幅の推計値は30~35万人である(ただし、難民が殺到した15年をピークに、プラス幅は4年連続で縮小している)。

 これに対し、ポーランドなどからの移民急増への拒否反応がEU離脱の大きな動機になった英国では、先行きの経済成長力の低下が危惧されている。ジャビド財務相は1月18日、英フィナンシャル・タイムズのインタビューで、英国の経済成長率をEU離脱後に倍程度に押し上げることを目指すとした。

 19年の成長率は前年比プラス1.3%程度だったようだが、技能訓練やインフラへの投資拡大を通じて、これを20世紀後半に見られたプラス2.75%に押し上げることを望んでいるという。けれども「イングランド銀行(英中銀)は、EU離脱後に移民減少や通商摩擦が予想されることから、成長率を長期的に大幅に高めることは困難とみている」などと、ロイター通信は報じた。