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オーストラリア・キャンベラから西に10キロの町で、山火事を消そうと奮闘する人たち(写真:AAP Image/アフロ)

 日本のメディアはほとんど報じなかったようだが、昨年12月20日にオランダ最高裁が下した判決は、「気候変動」問題への政策対応の必要性に西欧先進国の司法機関が積極的に関与したという意味で、世の中が以前とは大きく変わってきたことを示す意義深いものになったと、筆者は受け止めている。

 時事通信は「オランダ最高裁、政府に温室ガス削減命令=来年末までに25%」という表題で、判決の内容を報じていた。それによると、オランダの最高裁判所は12月20日、政府に対して2020年末までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも25%削減するよう命じる判決を下した。これは、同国の環境保護団体の訴えを認めた一、二審の判決を支持したものである。

 最高裁は、科学者や国際社会に「先進国の排出量は20年までに少なくとも25~40%削減する必要があるという意見の一致がある」と認定。政府はこれを下回る目標設定に正当な理由を示していないと判断した。また、気候変動は「(市民の)生命や幸福を脅かす」と指摘。欧州人権条約や国連の気候変動枠組み条約に基づき、政府に市民保護への十分な対応を取るよう促した。

司法が具体的な数値目標示したオランダ

 オランダ政府の現在の温室効果ガス削減目標は20%である。今回の判決は、司法府が行政府に対して気候変動対策の強化を迫るのみならず、具体的な数値目標まで示す、画期的なものになった。ウィーベス経済・気候政策担当相はこの判決を受けて、対応策を示すと表明。「政府は25%に向け努力を続ける」とした。オランダは国土の約3分の1が海抜0メートル未満であるため、国民が気候変動の問題に特に敏感であるという。

 日本の憲法学ではずいぶん前から、日本国憲法第13条が定める幸福追求権を根拠にして、基本的人権の1つとしての「環境権」、すなわち人間として良好な環境の下で生活を営む権利を国民が有することが、確立していると思われる。

 だが、日本で最高裁が政府に対して気候変動対策の強化を具体的に命じるような判決を出すことは、現時点ではなかなか想定できないように思う。日本の場合、司法は今後も、個別の政策課題への対応については民意を反映して成立している政府の裁量を重視する立場を取り続けるのではないか。

 オランダの隣のドイツでは昨年、発電量に占める再生可能エネルギーの比率が初めて化石燃料を逆転したという(1月4日付日本経済新聞)。また独政府は、温暖化ガス排出が少ない鉄道の利用を促進するため50キロメートル以上の長距離鉄道利用にかかる付加価値税率を19%から7%へ大幅に引き下げることを決定。これは実質的にドイツの鉄道運賃を約10%引き下げることと同じであり、その減税分を補うために航空業界の税負担を増やすことも検討されているという(2019年12月13日配信東洋経済オンライン)。

 昨年12月に就任したフォンデアライエン欧州委員長(ドイツ出身)が主要政策に位置付ける「欧州グリーンディール」の一環で、「(50年に実質ゼロの)実現の道筋を示せれば、EUが世界を引っ張ることができる」と、同委員長は訴えている。

 「石炭など化石燃料に依存する国々の再生可能エネルギーへの転換などを支援するのが主な目的だ。欧州委は『脱化石燃料』に向けた一歩としたい考えで、同分野での技術革新などを通じ、新たな成長戦略とする構えだ」という(1月15日付日本経済新聞)。

 欧州各国で先導的に急速に進んでいる気候変動対策の展開は、日本の政策担当者も金融市場関係者も、よく見ておく必要があるように思う。

 さらに、ドイツの隣のオーストリアでは1月1日、中道右派政党である国民党のクルツ党首が緑の党と連立を組むことで合意した(緑の党のコグラー党首は副首相に就任)。オーストリアで緑の党が政権入りするのは初めてのことである。気候変動対策を求める声が強まる中で、欧州ではスウェーデンやフィンランドでも緑の党が政権入りを果たしている。