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 地球温暖化が原因ではないかとみられている、世界で相次ぐ異常気象。筆者が東京で暮らしていても、以前はなかった「ゲリラ豪雨」や、勢力が極めて大きい台風の襲来など、「地球が壊れ始めたのではないか」と感じさせられる体験をする機会が増えている。

 経済成長率がこれまでより低くなろうとも、国民負担がこれまでに比べ多くなろうとも、自分たちが住んでいる惑星がこのまま壊れ続けるのをできるだけ回避する方向で、国際的に協調していけないだろうか。これが、「地球の住人たち」が直面している重要な課題である。

 筆者は古い世代に属しているため伝統的価値観から完全に抜け出すのは正直難しい面もあるのだが、米誌タイムが「今年の人(Person of the Year)」に選んだスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんに代表される若い世代ほど、危機感は大きいはずである。

経済成長至上主義を否定

 国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルが12月10日に結果を公表した22カ国の18~25歳1万人以上を対象にした調査によると、23の課題リストから主要な5つを選ぶ設問で、回答者の41%が選んだ最も多かった課題は「気候変動」だった。世界の政治指導者たちに対するウェイクアップ・コールだと、関係者は語っている(ロイター)。

 経済政策の論議においてはこれまでも、「経済成長至上主義」的な考え方を否定する方向で、何らかの対立軸が設定されることがしばしばあった。例えば、筆者が小学生の頃には「公害問題」が日本で大きな関心事になっていた。経済成長一辺倒ではまずいと、子供ながらに考えさせられたものである。

 その後、国民総生産(GNP)や国内総生産(GDP)が大きくなっても個人の幸福感が増すとは限らないという考え方が断続的に浮上し、「幸福度」を計測する試みが何度かあった。

 さらに、グローバル化の影響で新興国を含めて世界的に経済成長率が高まる中で数々のひずみが生じ、「格差社会」が強く意識されるようになった。富の独占が続くことをどのように防ぐべきか。ひょっとするとグローバル化の流れそのものを食い止めるために保護主義的な施策をすべきなのか。

 そして、SNS(交流サイト)社会到来で情報入手ルートが多様化したことが加わり、「社会の分断」が世界のあちこちで見られるようになった。2019年という年は、香港、フランス、イランなどを含むさまざまな国・地域で大規模なデモが発生した年としても記憶されるのだろう。

 そうした対立軸設定の流れの中で、今回の気候変動への危機感の高まりを捉えようとしてみたのだが、どうもしっくりこない。それはおそらく、気候変動というのはグレードが一段高いイシューだからなのだろう。

 環境規制を導入して公害をできるだけ防止する、個人の幸福感を高める、所得格差の是正に努める、グローバル化のひずみに政策的に対応する、あるいは上記の例示には含めなかったが財政を健全化するといった課題はすべて、地球がそのまま「安泰」であることが、暗黙の前提になっている。

 しかし、気候変動というのは、そうした暗黙の前提が悪い方へと徐々に崩れていき、人間がさまざまな活動を行っている「場」そのものが従来の常識を超えて不安定化するという、まさに危機的な事態である。経済成長が抑制されてもそれはやむを得ないことだと理解して我慢しつつ、最優先課題として国際協調を着実に進めるべきイシューだと言えるだろう。