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オーストラリアでは気候変動対策を求めるデモも開かれた(写真:AFP/アフロ)

 日本では2019年の「ユーキャン新語・流行語大賞」がラグビーW杯にちなんだ「ONE TEAM(ワンチーム)」に決まった。だが、海外では全く違う視点から「今年の言葉(Word of the Year)」が選ばれている。

 米国で辞書を刊行しているメリアム・ウェブスターは12月10日、「今年の言葉」がノンバイナリー(自らを男性・女性のいずれでもないと認識する人々)に使われる代名詞 “they” に決まったと発表した。3人称単数としての使用が可能。日本の英語の教科書は将来、この用法を含む方向で書き換えられるかもしれない。

英国では気候関連が今年の言葉

 英国で辞書を発行しているオックスフォード大学出版局が選んだ今年の言葉は、英国・米国ともに「気候非常事態(climate emergency)」。同じく英国で辞書を出しているコリンズが選んだのは「気候ストライキ(climate strike)」だった。昨年12月11日に都内で開催された日本経済新聞社など主催のエコノミスト懇親会で、黒田東彦日銀総裁がこの話題に触れていた。コリンズの編集部担当者によると、「気候変動問題は近年の避けて通れない話題であり、この単語は『ブレグジット』を上回るニュースになった」という(時事)。

一番熱心なEU

 気候変動対策への取り組みが最も熱心なのは、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長が、温暖化ガス排出量を2050年に実質的にゼロにする「気候中立」実現に向けた「欧州グリーンディール」を推進している、欧州連合(EU)だ。

 一方、先進国の中でそうした取り組みに最も不熱心なのは、トランプ大統領の決断でパリ協定からの離脱を11月4日に国連に正式に通告した米国だろう(大統領選投開票日の翌日である今年11月4日に離脱が完了する)。

 日本は両者の中間に位置しつつも、温室効果ガス削減目標引き上げ・石炭火力発電からの撤退を表明することができず、12月にスペイン・マドリードで開催された国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)では国際環境NGOから「化石賞」を2度ももらうことになった。

 だが、気象庁が1月6日に発表した2019年の年間平均気温(確定値)は平年(2010年までの30年平均)を0.92度上回り、1898年の統計開始以降で最も高い数字になった<図1>。地球温暖化の影響で高温になる年が多くなっており、19年は年を通じて気温が高い状態が続いた。日本の政策当局者はもっと危機感を抱いた方がよい。

■図1:日本の年平均気温偏差の経年変化(1898~2019年)
(出所)気象庁

 なお、米国では民主党大統領候補の指名争いに加わっているエリザベス・ウォーレン上院議員が12月20日、10.7兆ドル規模の気候変動対策を打ち出した。大統領選で勝利した場合はパリ協定への再加盟を目指す方針である。

 一方、金利関連の市場では、気候変動の問題が各国中央銀行の金融政策運営を大きく左右するとは考え難いことなどから、それに関連する動きへの注目度はかなり低いのが実情である。

 昨年11月に就任したラガルドECB総裁は、気候変動との闘いはECBにとって極めて重要だと12月4日に述べるなど、気候変動への対応に積極的な人である。だが、金融政策運営や金融機関監督の面からECBにできることは限られる。

 ドイツ連銀のイェンス・ワイトマン総裁は英経済紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、「中央銀行自らが気候変動対応の政策を作り出すことはできない。それは政府と議会の仕事だ」と明言した。ECBによる量的緩和(QE)に気候変動対応の要素を組み入れる、いわゆる「グリーンQE」構想に対しても、同総裁は否定的なスタンスである。

 結局、中央銀行パーソンが気候変動の問題で尽力したいと考えても、そのままの居場所ではやれることに限界がある。イングランド銀行のカーニー総裁は今年3月15日に退任する予定だが、その後に就く職務は国連の気候変動問題担当特使である。カーニー氏は「中銀トップとして気候変動がもたらす金融リスクなどに積極的に発言しており、国連に舞台を移して地球温暖化対策を主導することになった」(日経QUICKニュース)。