【8月】
 雨宮正佳日銀副総裁「私どもの政策手段としては、先ほど質問のあったような短期金利の引き下げもあるけれども、それ以外に長期金利の誘導目標の引き下げもあるし、あるいは資産の買い入れの拡大ということもあるし、あるいはマネタリーベースの拡大ペースの再加速といった手段もある。これらを単独で利用することもあれば、組み合わせることもあれば、応用することもあるので、その意味で金融政策の追加的な手段が尽きているとか、非常に乏しくなっているということではないと思っている」(8月1日、鹿児島で記者会見)

~ 日銀が持っている追加緩和手段で、それなりの効果が期待でき、かつ副作用が小さいものはもはや見当たらないのが実情である。だが、「タマはまだたくさんある」ように見せかけようと、日銀は努力している。19年夏~秋の米国の利下げ局面では、マイナス金利深掘りをちらつかせるコミュニケーション戦略を巧妙に展開。日銀はカードを切らずに乗り切った。

手詰まり感を嗅ぎ取られたECB

【9月】
 ドラギECB(欧州中央銀行)総裁(当時)「財政政策が責任を果たすべき時期に来ている」(9月12日 ECB理事会終了後の記者会見)

~ 10月末の総裁任期満了が近づく中で、マイナス金利深掘りや量的緩和(QE)再開を含む包括的な緩和策の決定をドラギ総裁は主導した。だが、財政政策の役割に何度も言及したこともあって、市場はむしろ、ECBの緩和策が手詰まりになったことを嗅ぎ取った。

【10月】
 安倍晋三首相「(10%への消費税率引き上げの)影響についてはしっかりと注視をし、万全の対応を取っていく」(10月1日、首相官邸で記者団に)

~ 8%から10%への消費増税が実施された。キャッシュレス決済へのポイント還元制度が2020年6月まで続くこともあり、家計が負担増を認識するまでには時間がかかる。

【11月】
 世耕弘成自民党参院幹事長「第2の矢だけは1回もちゃんと打ったことがない」「今回の補正予算はまさに正念場だと思っている」(11月19日、ブルームバーグのインタビュー)

~ 世耕氏は、19年度の補正予算には「十分な規模感」、具体的には10兆円規模が必要との認識を示した。翌20日午前には自民・公明両党の幹事長・国会対策委員長が都内で会談し、今回の補正予算は国が財政資金を直接支出する「真水ベース」で10兆円程度とするよう政府に求めることを確認。与党主導により財政出動規模が膨らんでいった。日銀が大規模に長期国債を買い入れる中で、債券市場が財政規律の弛緩(しかん)に警告を発する機能は消えてしまっている。これこそが実は、異次元緩和がもたらしている最も大きい副作用だと、筆者はみている。

【12月】
 パウエル米FRB議長「(FRBが利上げに動くのは)かなり大幅で安定した物価上昇を確認してからだ」(12月11日、FOMC終了後の記者会見)

~ FRBは、インフレ率目標2%を上回る水準まで物価の実勢を持ち上げ、その状態をしばらく維持することにより、上下対称の目標2%は達成されたという形を作り出そうとしている。そのためには多少の景気過熱も容認する構え。この先数年間、利上げは「封印」される可能性が高く、20年に「戦略見直し」をするECBでも方向性はおそらく同じである。

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