全4180文字
英国のボリス・ジョンソン首相。連合王国崩壊か?(写真:JESSICA TAYLOR/UK PARLIAMENT/AFP/アフロ)

 2019年12月12日の英国の総選挙で保守党が大勝し、半数を大きく上回る議席を得た。これにより今年1月末のEU(欧州連合)からの離脱実現に向けてジョンソン首相は「数の力」をもて、大きく前進している。

 英国は離脱後にEUとの間でFTA(自由貿易協定)を締結する必要がある。だが、移行期間は20年末までであり、時間的余裕が乏しい。もっとも、選挙での大勝により政治的な求心力を高めたジョンソン首相には、今後の対応で裁量の余地がある。

 一方、イングランドなどとともに連合王国を構成しているスコットランドでは、スコットランド民族党(SNP)が議席を大幅に伸ばした。EU残留派が多数であるスコットランドの連合王国からの独立論がこの先さらに強まることが避けられない情勢である。

連合王国解体があり得る

 政治思想に詳しい専門家からは、連合王国解体があり得るという予想が出てきている。英ケンブリッジ大学のリチャード・バーク教授は今回の総選挙より前に行われたインタビューで、「大胆に予測すれば、ジョンソン氏は選挙に勝ち、離脱を手に入れ、スコットランドを失う」「ジョンソン氏は来年1月の離脱後はスコットランドの英国残留派の抱き込みに全力を注ぐはずです。ただ、彼はスコットランドでは不人気。英国、つまり連合王国の解体はあり得る」と明言。北アイルランドでは英国残留派が98年時点で52%に減り、今はもっと少ないはずで、そこにも解体の気配はあるとした(19年11月30日付読売新聞)。

 歴史的に労働党(シンボルカラーは赤)の地盤であるイングランドの中・北部の議席を保守党(シンボルカラーは青)が大量に奪ったことが注目されており、英国のマスコミはこれを「赤い壁(Red Wall)の崩壊」と呼んでいる。

 「炭鉱閉鎖や製造業の衰退で大きな影響を受けた地域が多く、『労働者階級の政党』である労働党が根強い支持を得てきた」が、「繁栄から取り残された形のこれらの地域では、EUのエリート主義や移民流入への反発が強く、故に離脱派の割合も高い。いつまでも離脱が実現しないことに業を煮やす人々が『(離脱か残留か)方針を決められない』(ワーキントンの男性有権者)労働党に愛想を尽かし、一斉に保守党支持へと乗り換えた」(19年12月14日付時事通信)。

 今回の英総選挙における「赤い壁の崩壊」は、16年の英EU離脱国民投票や米大統領選の結果から浮き彫りになった「反グローバル化のうねり」が現在でもしっかり続いているという事実を極めて明確に示したものだと、筆者は受け止めている。

 そうした「うねり」における「主演男優」とも言えるトランプ米大統領は2019年12月13日、英総選挙での保守党勝利について、「わが国で起きることの前兆かもしれない」と述べ、今年11月に行われる米大統領選での再選に自信を示した。

 英国の「赤い壁」は米国の「ラストベルト」と、コンセプトが重なり合う。米国では、グローバル化の中で厳しい立場に追い込まれた多くの人々が、伝統的に支持してきた民主党から離れ、16年の選挙で共和党のトランプ氏に票を入れた。

 また、完全小選挙区で行われた英総選挙における労働党の惨敗には、党の方針の明確化や選挙協力を通じてEU残留派を結集することができなかった、同党のコービン党首による戦い方の拙さが寄与した面も、少なからずある。米国でも、民主党はこれまでのところ、戦い方が上手とは言えない。大統領候補の指名争いでは候補者がいまだに乱立。下院民主党は「ウクライナ疑惑」を受けた大統領の弾劾にこだわりすぎている感がぬぐえない。