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2020年11月の上院議員選挙に出馬が取り沙汰されるポンペオ米国務長官(写真:AP/アフロ)

 ノーベル平和賞を在職中に受賞した米国の大統領は何人いるか、ご存じだろうか。答えは3人。日露戦争の終結を仲介してポーツマス条約に導いた第26代セオドア・ルーズベルト(1906年受賞)、国際連盟の創設に尽力した第28代ウッドロー・ウィルソン(1919年受賞)、「核なき世界」実現に向けた国際社会への働きかけが評価された第44代バラク・オバマ(2009年受賞)である。なお、在職中以外では、国際紛争の平和的解決に向けた尽力が評価された第39代ジミー・カーターがいる(2002年受賞)。

 来年の大統領選で再選された場合、トランプ大統領は在職中にノーベル平和賞を受賞した4人目の大統領になることを「レガシー」として狙う可能性が高いと、筆者はみている。トランプ氏の念頭にあるのはおそらく、休戦協定が結ばれているものの国際法上は戦争状態が終わっていないままになっている朝鮮半島に、名実ともに平和をもたらした政治家としてなのだろう。

トランプ大統領をノーベル平和賞候補に

 米国の共和党議員らは、史上初で歴史的な米朝首脳会談が18年6月12日にシンガポールで開催されるよりも前の時点で、朝鮮半島非核化や地域の平和に尽力していることを理由にしてトランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦した。

 また、今年2月15日の記者会見でトランプ大統領は、ノーベル平和賞選考機関にトランプ大統領を推薦した安倍首相による「最も美しい手紙」のコピーを受け取ったと発言。推薦された理由については、「日本の上空を飛ぶ(北朝鮮の)ミサイルで警報が鳴っていたが、私がその脅威をなくした」「オバマ前大統領でも成し遂げられなかった」と説明して、米朝首脳会談の成果を誇った。

 時事通信が報じたところによると、今年9月23日に、トランプ大統領がノーベル平和賞を狙っていることが露呈する一幕があった。大統領はカーン・パキスタン首相との会談の冒頭、パキスタンとインドが領有権を争っているカシミール問題を解決できればノーベル平和賞に相当するのではとの記者団からの質問に対し、「もし(選考が)公平なら、多くの理由で私がノーベル(平和)賞を受賞していたと思うが、そうではなかった」と述べて、19年に自らが受賞できなかったことへの不満を口にした。

北朝鮮に募るいら立ち

 トランプ大統領はさらに、オバマ前大統領が就任から間もない09年にノーベル平和賞を受賞したことに言及し、「彼(オバマ氏)は、なぜ自分が受賞したのか分からなかった。その点だけは私も同感だ」、カシミール問題の平和解決に向けた仲介については「(印パ)双方が望むなら喜んで引き受ける」などと述べたという。

 北朝鮮の非核化に向けた米朝協議は行き詰まっており、非核化は全く進展していない。そして、北朝鮮は最近、米国が一切譲歩しないことに対し、いら立ちを募らせているように見える。

 そうした北朝鮮のいら立ちの背景には何があるのか。大いに関係しているのは、北朝鮮には非核化する気がないから強硬姿勢を崩すべきではないと主張していたボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が9月10日に更迭されたことだろう。

 ボルトン氏が外されたから、金正恩朝鮮労働党委員長との良好な個人的関係を口にすることが多いトランプ大統領自らが非核化プロセスで北朝鮮に譲歩して、非核化をあまり進めなくても経済制裁解除に向けて動いてくれるのではないか。北朝鮮指導部はそうした淡い期待を抱いたのだろう。