米国でも、ジェネレーションZと呼ばれる新しい世代が社会に入ってくることにより、個人消費に影響が出てくると考えられる。世界経済をいま支えているのは実質的に米国人の過剰消費体質だというのが、筆者の見解である。一朝一夕にそれが変わるわけではないものの、将来の変化の芽を認識しておくことは無駄ではあるまい。
整理しておくと、米国の世代別の主な呼び名は以下のようになっている(年齢区分は厳密なものではなく、論者・メディアにより微妙に異なっている)。
- 「サイレントジェネレーション(沈黙の世代)」(1925~45年生まれ)
- 「ベビーブーマー」(1946~63年生まれ)
- 「ジェネレーションX」(1964~80年生まれ)
- 「ミレニアル世代(ジェネレーションYとも呼ばれる)」(1981~94年生まれ)
- 「ジェネレーションZ」(1995~2010年生まれ)
親の苦労を目の当たりに
「ミレニアル世代」が技術革新・社会の変容を目の当たりにしてきた「デジタルパイオニア」の世代であるのに対し、「ジェネレーションZ」はいわゆる「デジタルネーティブ」の世代である。
また、「リーマン・ショック」などで米国経済が大きく揺さぶられて自分の親が苦労した姿を幼少期に目の当たりにしたことが、彼らの行動パターンに大きく影響している。
米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは18年9月7日、「ジェネレーションZ」が成人して労働市場に徐々に参入してくることをテーマにした特集記事を掲載した。
米国史上、最も多様な世代
この世代は人種的には、米国史上で最も多様な世代である。金融危機やテロの恐怖などを幼少期に経験して心に傷を負っているこの人々は、行動パターンが概して慎重だという。それを示すデータとして、この世代の高校生は、お酒を飲んでみた比率、深い男女関係に関する比率、運転免許を取得した比率が、いずれも低くなっている。金融の面では安全志向が強く、有名大学の高い学費を支払うために無理に教育ローンを組むことには慎重である。
仕事の面では勤勉で、ミレニアル世代よりも残業をすることに積極的だという。だが、社内プロジェクトを立ち上げた際に、ミレニアル世代はすぐに集まりチームを作って一緒に働くのに対して、「ジェネレーションZ」は個々人による成果の認識と追加の給与支払いを求めるというエピソードが紹介されていた。デジタルの「個」の世界にずっとつかってきたことが、おそらくかなり関係しているのだろう。
このように、「ジェネレーションZ」は勤勉な「アリ」、リスクテイクに慎重な「草食系」の性格が色濃く、これまでの典型的な米国人像である過剰消費の「キリギリス」、リスクテイクに積極的な「肉食系」とは、相当異なっている。また、米国の若者の間では、社会主義的な傾向を帯びているサンダース上院議員など民主党左派への支持が厚いこともよく知られている。
「ジェネレーションZ」の後には、それより後に生まれた世代、「ジェネレーションアルファ(アルファ世代)」も控えている。政治への影響も含め、米国経済についても世代交代を原因とする影響がじわり浸透してきていることは、決して見逃せない。
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