金融政策正常化のプロセスとして17年10月から縮小が開始され、今年7月の利下げ開始に合わせて縮小が前倒しで停止されていたFRBのバランスシートは、理由はともあれ、割とあっさり拡大の流れに戻った感が強い。

 また、ECB(欧州中央銀行)は、10月末に任期満了を控えていたドラギ総裁(当時)が主導して、9月の理事会で11月からのQE再開を決定した。ラガルド総裁の就任前に決まった政策が淡々と実行されており、ECBのバランスシートは毎月拡大していく。この間、日銀は異次元緩和の一環でオーバーシュート型コミットメントを掲げており、物価上昇が弱い間はマネタリーベースを増やすことを公約している。日銀のバランスシートは今後も拡大を続ける可能性が高い。

 こうなると、「カネあまり」への安心感を足場にして米国株は上昇しやすく、日本株もそれに連動する場面が出てきやすい。米国の利下げが一巡し、ドル円相場の円高リスクが減退しているだけに、なおさらそういうことになる。

 とはいえ、経済実態とあまりにかい離した資産価格の上昇は、いずれかのタイミングで維持不可能になり、何らかのきっかけで自律的に調整するだろう。そうした「ミニバブルの生成・崩壊」が今後も世界のあちこちで繰り返されるだろうと、筆者はみている。

 では、米国株が大幅に下落してしまい、FRBが利下げを再開する程度では焼け石に水にしかならないような、何らかの急激な状況悪化は想定されないのだろうか。

米国経済リセッションのリスク要因とは

 すでに述べた通り、鍵を握るのは米国の経済がリセッションに陥らないか、米国人の「キリギリス」的な消費行動が急変して腰折れしないかである。可能性はおそらくかなり小さいものの、たとえば米国とイランが戦争状態に突入したり、大規模なテロ事件が米国内で続発したりすることによって、米国人の消費マインドが一気に冷え込むケースが、リスクシナリオとして想定される。もっとも、これらは短期スパンのシナリオ想定である。

 より長い視点で、何かないだろうか。すぐに大きな影響が出てくるわけではないものの、筆者が気にかけているのは、「キリギリス」ではなく「アリ」的であり、「肉食系」ではなく「草食系」の色合いが濃い米国の若い世代、 「ジェネレーションZ(Z世代)」の消費行動パターンである。

 日本では近年、個人消費の姿がさまざまな角度から変わりつつある。人口構成の面から、少子化に伴う子ども関連ビジネスの縮小(とはいえ「お受験」の関連は今後も例外だろう)、高齢化に対応した商品・サービスの提供など、日々の生活で目にする実例は数多い。

 そうした中で1つ見逃せないのが、若者を中心に見られるライフスタイルの大きな変化である。保有した場合のコストが大きいため自動車は買わずに公共交通機関やカーシェアなどで済ませる人が多いほか、バスタブにつからずシャワーのみで終えるなど、冷静に考えるときわめて合理的な行動パターンが目立つ。

次ページ 親の苦労を目の当たりに