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ジェネレーションZは最も人種が多様(写真:PIXTA)

 米国経済は成長率が徐々に減速(スローダウン)してきているものの、良好な雇用・賃金環境などを背景に「大黒柱」である個人消費がしっかり推移しているため、近い将来に景気後退局面(リセッション)入りする可能性は小さい(当コラム10月29日配信「『米国人のキリギリス体質』が世界の命運を握る」ご参照)。

 米連邦準備理事会(FRB)が7月から予防的に利下げに動いたため、金利敏感セクターである住宅部門が改善しているほか、主要株価指数が最高値を更新することにより資産効果の面から個人消費が刺激されている。

 米労働省が11月1日に発表した10月の雇用統計は、事前の市場予想よりもしっかりした内容になった。非農業部門雇用者数は+12万8千人で、8月・9月分は合計で9万5千人も上方修正された。さらに、この10月の数字には米大手自動車メーカーで続いた大規模ストライキの影響による自動車・同部品の雇用の一時的な減少、および国勢調査関連の連邦政府の臨時雇用2万人の契約終了という2つの特殊要因が含まれているので、雇用の実勢は上記の+12万8千人よりも強いと考えられる。

FRBは様子見モード

 また、同じ統計で明らかになった時間当たり賃金は28.18ドルで、前月比+0.2%。前年同月比では+3.0%という、まずまずの伸び率。個人消費にはポジティブな材料である。

 このほか、失業率は3.6%(前月比+0.1%ポイント)で、50年ぶりの低水準を記録した9月からわずかに上昇したものの、労働市場参加率が63.3%(同+0.1%ポイント)になっており、労働市場への人々の参入意欲が増したことが影響していることがわかる。多くの企業がリストラに動いたことを主因とするような悪性の失業率の上昇ではない。

 クラリダFRB副議長はこの雇用統計発表後にブルームバーグテレビに出演し、「経済の見通しは明るい」「経済は良好な状況にあり、金融政策も良好な状況にあるとわれわれは考えている」と発言。パウエルFRB議長と同様、10月の連邦公開市場委員会(FOMC)で決めた3度目の「予防的」「保険的」な利下げによって今回の利下げ局面には区切りがついており、FRBは様子見モードに切り替えていることを強く示唆した。

 景気や金融市場のよほどの変調がない限り、米国の政策金利は来年を通じて据え置きが続くのではないかと、筆者は予想している。米10年債利回りは、利上げ局面がいったん終了したという認識の浸透に加えて、米中貿易交渉の行方に関する楽観論が促した株大幅高などを背景に水準を切り上げているものの、2%前後からは押し目買いニーズが厚いとみられるので、1%台後半を中心とする上下動が今後の基本線になるだろう。

 さて、筆者が常にウオッチしている日米欧中央銀行のバランスシート規模の合計値は、10月から再び膨張していく流れにある<図1>。「カネあまり」相場がこの先も続くだろうという市場の安心感を醸成する、シンボリックな動きである。

■図1:日米欧中央銀行のバランスシートにおける総資産の合計額(米ドル換算)
注:ECBは1ユーロ=1.10ドル、日銀は1ドル=108円で換算
(出所)米FRB、ECB、日銀資料から筆者作成

 銀行の準備預金残高が規制要因や季節要因から不足して短期金利が予想外に大きく上昇する事態に直面したFRBは10月11日、景気・物価を刺激する政策意図を持った量的緩和(QE)再開ではなく短期金利にらみの純粋にテクニカルな措置だと強調しつつ、短期ゾーンの米国債の買い切りオペを20年4~6月期にかけて毎月実施することをアナウンスした。