ポイント還元などが効いている?(写真:PIXTA)
ポイント還元などが効いている?(写真:PIXTA)

 これまでに出てきたマスコミ各社による世論調査結果を見る限り、10%への消費税率引き上げが有権者(消費者)に及ぼした影響は、あまり大きなものになっていない。

 朝日新聞による調査(10月19~20日実施)を見ると、10月からの消費増税で「お宅の家計への負担はどの程度重くなっていますか」という問いへの回答のうち、「かなり重くなっている」(8%)と「ある程度重くなっている」(37%)の合計は45%。この数字は「あまり重くなっていない」という回答(44%)とほぼ同じである。「全く重くなっていない」(8%)は、キャッシュレス決済によるポイント還元などをフル活用している層だろうか。

 もっとも、「消費税を引き上げたことで、景気に悪い影響が出る不安をどの程度感じますか」という問いへの回答を見ると、「大いに感じる」(15%)と「ある程度感じる」(46%)の合計である6割超が、景気悪化への不安を抱いている。残りは、「あまり感じない」(33%)、「全く感じない」(4%)である。

 消費増税から3週間未満というタイミングで行われた上記の調査で、家計の負担感がさほど強まっていないという結果が示された最大の理由はやはり、①食料品等に適用されている8%の軽減税率だろう。購買頻度が高いカテゴリーで税率が据え置かれたことは、家計の意識に対し、相応に大きく作用していると考えられる。上記世論調査でも、軽減税率を「評価する」が58%に上った(「評価しない」は33%)。

 これに、②キャッシュレス決済へのポイント還元制度を中心とする官民による各種キャンペーン、③本体価格表示が認められており実際に幅広く使用されているため、家計が負担を実感するタイミングが遅くなりがちであること、以上2点が加わっているとみられる。

 ③について付言すると、14年4月に5%から8%に消費税率が引き上げられた際、ファミリーレストランやスーパーの経営者から「消費者の動きが目立って悪くなった」といった声が出て来たのは同年6月下旬になってからであり、時間差があった。今回は②によって消費者が少なからず「幻惑」されている面があるため、負担増を実感するタイミングは14年のケース(増税後2カ月弱)よりも先になるのではないか。筆者はそうにらんでいる。

 同じ10月19~20日には産経新聞・FNN合同の世論調査があり、消費増税の関連で、朝日新聞調査とは異なる角度からの設問があった。

駆け込み需要は小さく、増税後も消費減らさず

 今回の消費増税前に「駆け込みで買い物をしたか」という問いへの回答分布は、「買い物をした」(21.4%)、「買い物をしなかった」(78.4%)になった。駆け込み需要が今回は小さかったことが裏付けられている。

 筆者が驚いたのは、「消費税率が引き上げられた今月1日以降、買い物を控えているか」という問いへの回答分布である。「控えている」は17.9%にとどまり、「控えていない」が80.0%というかなりの多数派になった。駆け込み需要とその反動が大きくないという話と整合する結果ではあるのだが、税率が2桁に乗ったことで年金生活者層などが心理的に圧迫されて、もう少し厳しい結果になってもおかしくなかったように思う。

 日本経済新聞・テレビ東京の調査(10月25~27日実施)でも、消費増税実施後に支出を「減らした」という回答は21%にとどまり、「変わらない」が76%に達した。

 一方、消費者庁が10月3~7日に実施した10月の物価モニター調査(速報)は、「あなたの世帯の消費への支出額を、今後3カ月の間について、去年の同期間と比べて、どのようにしていこうと思っていますか」という問いだった。

 回答分布は、「減らそうと思っている」(59.6%)、「特段増やそうとも減らそうとも思っていない」(35.9%)、「増やそうと思っている」(4.5%)。産経新聞・FNN調査などとは大きく異なる結果だった。物価モニターを委嘱されている人々の方が消費増税の影響を含めて物価動向に敏感だからだという説明はつけられるのだが、いずれにせよ、他の調査結果もチェックしていく必要があるだろう。

 産経新聞・FNN調査で、朝日新聞のそれと結果が似ていたのは、消費増税後の景気悪化を心配している層が過半数になった点である。回答分布は「心配している」(52.2%)、「心配していない」(43.0%)。9月14~15日実施の前回調査ではそれぞれ59.4%、37.3%だったので、センチメントはやや楽観に傾いたものの、「心配している」が50%を上回った。

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